私の腕の中で眠っている仲達を起こさぬように携帯を取った。
三成からメールが着ている。
『昨日は楽しめたか?一応、病院に行っておけよ』
何の話だ。
そう返信しようと思ったが心当たりがひとつしかない。
尾行されていたのかもしれんが、とりあえず返事を返しておいた。
携帯を置いて仲達を抱き寄せる。
もう一眠りしようと思ったのだが、仲達の体が妙に熱い。
「…?」
「けほ…っ…」
頬が赤い。
咳込んでいる仲達の背を撫でて頬に触れた。
「…風邪をひいたか?」
「かも、しれませんね…」
「病院に」
「…今日は日曜日」
仲達は布団に丸まり、私に背を向け咳込んでいる。
見れば仲達はまだ薄着のままで、体も完全には清めていない。
病院に連れて行かねばと思いはしたが、情事後の仲達を誰にも触れさせたくはなかった。
せっかくまた二人きりになれたというのに。
仲達の携帯を開き、一応私の名前で師にメールを送った。
さすがに体が昨日のままでは気分が悪かろうと、足早に仲達をバスルームに運びシャワーを浴びせた。
仲達の体が熱い。
ぼんやりとした瞳のまま私に甘えるようにしがみつく。
私の我が儘で仲達の身に大事が起きたら、きっと私は己を一生許せない。
私の我が儘よりも仲達の体調を優先した。
「しかん、さま…」
「病院、行くか」
「…や、です…」
二人で居たい。仲達で居たい。
私に擦り寄り掠れた声で仲達は言った。
体調が優れないせいか、昨日の事があってからか知らぬが、
仲達は普段以上に私に甘える仕草を見せた。
普段はこのような姿を私と二人きりでも滅多に見せぬというのに。
今日はどうしたのだと心配する程に甘えたがる。
私にだけは心も体も、全てを許してくれているのだろう。
それを解りやすく示してくれた。
仲達の素直な仕草が愛おしく、可愛らしいと口には出さず目一杯甘えさせてやる事にした。
帰宅したら父親に戻り、この様には甘えられないだろう。
私の前でだけ素直になれるというのなら甘やかせてやりたい。
体を清めバスルームを出た所で仲達は腰が立たず、
ぐったりとしてタオルに包まれたままソファーに凭れていた。
体を拭いてやり私の服を着せて、髪をドライヤーで乾かして額に水で湿らせたタオルを置いた。
ベッドに連れて行こうとするも仲達は嫌がり従わない。
私が居るのにベッドで独りになりたくないのだと、首を横に振る。
仕方なくソファーに寝かせ毛布を持ち寄り仲達に掛けた。
何か飲ませてやろうとキッチンに走り湯を沸かす。
仲達がソファーに横になったまま私を見つめていた。
何だか小動物を相手にしているような気すらしてきた。
借りてきた猫が漸く懐いてくれたかのような、そんな心地がする。
「昼になったら出掛けるぞ」
「何処に?」
「病院」
日曜日に開いている病院を携帯で探しながら、仲達の携帯を開くと師からメールが着ていた。
昭からもメールが着ている。
『父上が嫌がっても絶対に病院に行って下さい。後程迎えに参ります』
『父上は大丈夫ですか?
以前にも大したことないって風邪から肺炎になった事があるんです。絶対に病院に行って下さいね!』
子供らからのメールを仲達に見せると、苦笑して一言『病院に行く』と仲達が返信をして携帯を閉じた。
湯が沸いたので直ぐに飲めるよう少し温くしてから茶を煎れて仲達の隣に座った。
仲達は何とか体を起こして私の肩に凭れ擦り寄る。
やはり猫だ、と何処となく思う。
「昨日、寒かったからな…無理をさせてしまったか」
「いいえ…昨日は本当に楽しかった…」
「そうか。気分はどうだ」
「頭がぼーっとします…」
額同士を合わせて熱を計ると、今朝よりも熱が上がっているように思えた。
生憎、私の部屋に体温計や薬などはない。
頬を包み額に口付ける。
茶を飲んだ後、仲達は下を向いた。
「…ごめんなさい」
「ん?」
「せっかく…あなたと二人きりになれたのに」
「なら、早く病院に行って二人きりになろうか」
「はい…」
肩を落とす仲達に口付けようとするも、仲達は首を横に振った。
「…あなたにうつしたくはありません」
「そうか」
仲達は寂しそうに下を向く。
唇に出来ないのならと頬に口付けて頭を撫でた。
簡単に着替えをさせて毛布も持って行き、仲達を車に乗せて近くの病院に向かった。
携帯で調べた病院の前に着くと仲達はさも嫌そうな顔をした。
病院が嫌いらしい。
随分と子供のような理由だな…と思いながらも急患で入った病院でその理由の意味が解った。
「おや、随分と懐かしい顔触れですね」
「…諸葛亮か?」
「お久しぶりです曹丕殿。漸く司馬懿と巡り会えたのですね」
「医者になったのか」
「はい」
どうやら仲達は諸葛亮が居る事が解っていたらしい。
溜め息混じりに診察室に入り椅子に座った。
話を聞く限り、非常勤医師として各地を転々としているらしい。
偶然か必然か、私に再会するより以前に仲達に出逢ったと言う。
仲達は渋々、諸葛亮の診察を受け今は体温計で熱を計っている。
諸葛亮は仲達よりは年下だが、私よりは年上のようだ。
仲達に処置を施しながら諸葛亮は話す。
「以前から司馬懿がよくあなたの事を話していましたよ」
「何?」
「…諸葛亮」
「司馬懿はあなたの事をよく話します」
胸を見せて下さい、と言う諸葛亮の一言に仲達は顔を背けた。
見せるのは嫌だと言う。
仕方なく私が背後に座り、服は捲らぬようにして聴診器を当てさせた。
仲達は不満そうに顔を背けている。
「相変わらずですね、司馬懿」
「何処か悪いのか」
「いえ、彼はただ」
「…諸葛亮に触れられたくないだけです」
「だ、そうです。それにあなたの前でしょうから」
「そうなのか?」
仲達は問いに答えず目を逸らした。
ただの風邪だと言うが、以前無理をして倒れている事もあり体力が落ちていると言う。
大事にならぬよう念を入れて点滴を受ける事になった。
ベッドに横になる仲達に点滴を施し、一度諸葛亮は退室した。
「…以前から知り合っていたのか?」
「偶々です」
「そうか。まぁ…大事がなくて何よりだ」
「戻りました」
点滴を受ける仲達の頭を撫でていると諸葛亮が戻って来た。
横目に待合室を見ると誰もいない。
どうやら診察時間は終わり、諸葛亮は表の入口を閉めてきたようだった。
仲達に大人しくしているように促すと諸葛亮は再び椅子に座り直した。
「同じ名前の子供が生徒に居る、と初めはそう仰っていましたよね」
「…そうだったか」
「ええ、よく覚えています。
泣きそうな顔で、あの方は何処かに居るのだろうか…と仰っていましたね」
「止めろ。昔の話など」
「否、詳しく聞きたい」
「子桓様…」
「ああ、また、そうお呼びしているのですね」
「煩い」
「ふ、漸く以前のような司馬懿が見れました」
諸葛亮に茶を貰う。
点滴が終わるまでの間、仲達と出逢うまでの話をした。
入口を閉めたので急患がない限りは時間があるらしい。
諸葛亮が居ると、仲達はまた別の表情を見せる。
何だかんだと悪態をつきながらも、互いに認め合っているのだろう。
まさか諸葛亮に遭うとは思わなかった。
確かに諸葛亮と話す仲達は何処か、以前の魏の軍師であった時のような面影が垣間見える。
「なれば、同じ名前の生徒と言うのはやはり曹丕殿本人だったのですね」
「ああ」
「…私もまさか本当に本人だとは思っていなかった」
仲達は冷静ながらも、表情がよく変わった。
諸葛亮の前だと感情的になる。
敵同士であったというのに会話は続いた。
今だけはあの三国志の時代に居るような気さえする。
何処かとても懐かしい。
失われた時代に還ってきたようだ。
「何故に医者に」
「頭が良いものですから」
「…嫌味か」
仲達が言うと諸葛亮は朗らかに笑う。
「冗談です。今度は命を救う側に立ってみようと思いまして」
「ほぅ」
「笑いますか?」
「否、別に」
「せっかくですからね。人生これからですよ、曹丕殿」
「そうかもしれぬ」
諸葛亮の言葉は尤もだ。
未だ私は何もしていない。
仲達に巡り会えた事で漸く私の生き方に色が付いたところだ。
点滴が終わったらしい。
針を抜いた後も暫く安静にしているよう仲達に促した。
体を起こした仲達にも諸葛亮が茶を煎れて渡した。
「司馬懿殿が何故教師になったか、知っていますか?」
「聞いた覚えはない」
「言わなくていい諸葛亮」
そう言えば聞いたことはない。
何せ出逢った時から仲達は教師だった。
過去に私の教育係に就いていた故に、その名残かと勝手に思っていた。
「ふふ。司馬懿から聞いた昔話です。
曹丕殿も私も死した戦乱の時代に独り遺された時のお話。
才を持て余していたそうで、大層いじけていたそうですよ」
「…そうなのか?」
「凡愚ばかりだ、と仰っていたとか」
「そう言われれば、頷くしかあるまい…」
「結果的にはそうなったとはいえ、そのまま司馬懿が天下を取らなかったのが不思議なくらいです」
「天下などに興味はなく、私に時間がなかった。それだけの事よ」
仲達の襟元を正して目を閉じた。
それ以上は何も言わない。
諸葛亮は私に向き直り話を続けた。
「持て余すくらいの才なら、後生に伝えてやりたい、と仰っていましたね」
「ほぅ」
「それで教師になる事を選んだと聞いていますが」
「昔の話だ」
「それにあなた、子供好きでしょう?」
「べ、別に好きではないわ」
「本当は優しい方ですからね」
「違う!私はそんな事」
「解りやすいな仲達」
「でしょう?つい苛めたくなります」
「確かに。だが、余り苛めてくれるなよ」
「ええ、解っています」
「何ですか子桓様まで…」
拗ねる仲達を宥め、諸葛亮と話を続けた。
此奴、仲達の事となると話が合う。
改めて、仲達の見解に少なからず見直した。
仲達は仲達で、この時代に沿った生き方をしようとしているのだろう。
正直、意外だった。
諸葛亮が絆創膏を貼って処方箋を書いている。
仲達は憮然としていたが、諸葛亮を見ずに話しはじめた。
「…諸葛亮」
「はい」
「湿布とか、ないか」
「ありますが、怪我でも?」
「…子桓様の肩を診て欲しい」
「まだ気にしていたのか仲達」
「はい」
「まぁ、序でですから診せて下さい」
仲達の進言で諸葛亮に肩を診て貰った。
結局は軽い打撃痕と判断されて軟膏を塗られる。
骨などに異常もなく、大事ない。
仲達は漸く安堵したのか、胸を撫で下ろして私の肩に凭れて目を閉じた。
己が点滴を打たれる程弱っているというのに私の心配ばかりしていたようだ。
「司馬懿は随分と丸くなりましたね。棘が抜けたようです」
「…煩い」
「心配をさせたな。すまなかった」
「いいえ…安堵致しました」
「それに随分と素直になられたようで」
「煩いわ諸葛亮」
「それだけ回復すればもう大丈夫でしょう」
「あ…」
諸葛亮が笑い、仲達の額に触れた。
諸葛亮に代わり額に触れればまだ熱いが、今朝よりは大分下がっている。
長居はせぬよう、諸葛亮に礼を言い処方箋を受け取った。
仲達は私の背に隠れるように諸葛亮から遠ざかる。
「どうせ長時間外出して、温かい室内で汗をかいてそのまま薄着で寝たのでしょう?」
「う…」
「是非もなし、だ」
見透かされたかのように諸葛亮は言う。
言われてみれば確かにそうだ。
おまけに昨日は防寒していたとはいえ、仲達が一日中薄着だった。
何も言えず仲達は下を向く。
「ふふ、それだけ熱が引けば何をしても大丈夫ですよ」
「解った」
「余り無理しないで下さいね。曹丕殿もです」
「そうか。世話になった」
「お大事に。あと、お幸せに」
「!」
諸葛亮は朗らかに笑い手を振った。
どうやら我等の関係は見透かされているらしい。
照れ隠しなのか、諸葛亮から逃げるように腕を引っ張る仲達を捕まえてまた手を繋いだ。
あの諸葛亮は、もう策を仕掛けてくる気配もない。
存外、話してみれば彼奴とは話が合った。
「…ふ、もっと昔から話せば良かったのかもな」
「?」
「何でもない」
理想が違うだけで、随分と長く刃を交えたものだ。
今更、どうなる訳でもないが。
仲達の肩を引き寄せると漸く大人しくなった。
肩を抱いたまま歩く。
「まさかあの諸葛亮と茶を飲む事になろうとは思わなんだ」
「…諸葛亮は」
「ん?」
「苦手なのです。何もかも見透かしたように話す。私はまだを過去を引きずっているみたいで…」
「仲が良いな」
「だ、誰が!」
「余り他の男の話をしてくれるな。妬くぞ」
「っ…」
静かにさせた仲達を車に乗せてドアを閉めた。
運転席に乗ると、後部座席で布団にくるまっていた仲達がおずおずと私の肩にまで近付く。
「何だ」
「…妬いていたのですか?」
「さぁな」
「…いつから?」
「秘密」
「教えて下さい」
「戻れ。命令だ」
「嫌です。もう主従ではないのですから」
「…そうだった。ああ、妬いていたとも。ずっと嫉妬していた。二千年前からずっとだ」
「あの時代から…?」
もう仲達を命令出来る立場にないのだと今更ながらに思い出し、正直に思いを話した。
諸葛亮に嫉妬する余りに先陣に立った事すらあると仲達に白状した。
仲達は少し悲しそうな顔をして笑い、後部座席に戻った。
処方箋を引き換えに薬局で薬を貰う。
途中、薬膳粥の店に立ち寄り粥を食べて薬を飲ませた。
何処に出掛けるにも仲達から手を繋いでくれた。
昨日からずっと、仲達から私に触れてくれる。
「お前から触れてくれるのか」
「…そうして、欲しかったのでしょう?」
「…ふ」
「何です」
「素直になった方が気が楽だろう」
「こんなにあなたと長い時間、一緒に居るから…でしょうか」
「そうか。それは良いな」
仲達と指を絡めて手を繋ぎ、街を歩いた。
あの時代に居た頃よりも随分と距離が縮まったように思う。
剣を持たずとも良い。
この手さえ離さなければ。
ずっと離さなければ良かった。
病院に行った旨を三成にメールし、師と昭にもメールをした。
二人きりになりたいという思いもあり、仲達の熱が下がるまでは私の部屋にいる旨を伝えて帰宅した。
ソファーに座り、仲達に額同士を合わせる。
大分熱は引いていた。
もう口付けても良いだろうか。
頬を包み込み、仲達に唇を寄せる。
仲達は拒まなかった。
そのまま舌を絡め、銀糸が伝う程に深く口付けた。
「もういいのか?」
「…こんな事をしていたら、また熱が出ますよ」
「熱が出たら」
「?」
「ずっと…仲達を此処に閉じ込められるかと思った」
「閉じ込めたいのですか?」
「…出来ぬ事は言わぬ」
「…もう一度、して下さい」
「何度でも構わぬ。お前となら」
仲達から口付けられて目を閉じ、遠慮がちな口付けに応えた。
仲達をベッドに寝かせてダイニングに向かおうとしたが、仲達が手を離さない。
何処か遠くに行く訳でもない。
そう言い聞かせても仲達は話を聞かなかった。
「…離れないで下さい」
「私は何処にも行かぬ」
「お願いです…」
「…どうした?」
「……。」
「解った。何処にも行かぬ。お前の傍に居よう」
額に触れればまた少し熱が上がっているように思えた。
言葉では言わずとも、体調が悪い仲達は心細いのだろう。
「…もっと」
「ん?」
「もっと…昔から…素直になっていればよかった…。
こんな風に、誰かに甘えてみたかったのです…」
意地を張って、自分の本当の気持ちを堪えて隠していたと仲達は話した。
背を向ける仲達を振り向かせて頬に触れる。
「…誰か、と言うのは感心しないな仲達」
「え?」
「誰か、は…私だけにしてほしい」
「そう命じられれば、よろしいのに」
「お前の意思を私の言葉で縛りたくはない」
それにもう、私は命じる立場ではない。
嫌なものは嫌だと言って欲しい。
仲達の自由を奪いたい訳ではない。
「…縛られているつもりはありません。私から望んで…」
「ん…?」
「少し、お話をしても…」
「ああ」
「…寒いです…傍に来て下さい」
私を引き寄せ、布団に引き込む。
仲達は私の胸に埋まった。
「…私は、あなたのものです…」
「無論だ、仲達」
「こんな事はもうないと思っていました…。
もう一度があるのなら、またあなたと…一緒に生きていきたい…」
「ああ、寂しくさせたな。…今度は私から手を離す事がないように…」
「…今度は私が手を離してしまうかもしれませんよ?」
「私が離さぬ。何があっても絶対に」
「なれば、しっかり捕まえていて下さい」
仲達の背に腕を回して、壊れてしまわないように優しく抱き締める。
仲達の頬に一筋、涙が流れている事に気付き少し力を緩めた。
「痛かったか?」
「…いいえ。子桓様、聞いて下さい」
「ああ」
「あの時代の私は、側近でもなく…軍師でもなく、私はずっと…」
「ずっと?」
ずっと。
その先を言えぬ頬を撫でて額に口付けると、仲達はぽろぽろと涙を流した。
「ずっと、私は…あなたの恋人で居たかったのです…。
あの時代では…その願いは叶いませんでした。私は…あなたの気持ちに応えられなかった。
だから…この世界ではやり直したい。
もう一度、少しでも長く、私をあなたの恋人で居させて下さい…」
今までの思いを吐露するかのように、仲達は私を見つめ涙を流す。
その仲達が愛しくて堪らない。
直ぐ横で携帯が鳴っていたが、電源ボタンを押して着信を消した。
「敢えて言わずとも、と思ったのだが…お前には言葉で言わねば伝わらぬか」
「…?」
「やり直さなくていい」
「え…」
「繰り返すだけだ。何故ならあの時代、私にとってお前はずっと私の恋人だった」
「…繰り返す…」
「今でもずっと、私は仲達を愛しているし、恋人だと思っている」
ぽろぽろと頬を伝う涙に何度も口付けて、最後に唇に口付けた。
仲達が涙を拭って私の頬に触れ眉を寄せて見つめ返す。
また泣かせてしまいそうだ。
「私はずっと仲達が好きだ。過去でも今でも、ずっと仲達を愛している」
「もう、それ以上言わないで下さい…」
「何故?」
「幸せで…どうにかなってしまいそうです…」
仲達が頬を染めて笑う。
その頬にまた唇を寄せると仲達はくすぐったそうに笑う。
携帯からプツンと通話が切れるような音がした。