此奴はどうしてこんなにも…ああ、堪らなく仲達が好きだ。
私の体の下で、私を好きだと呟く仲達がひたすらに愛しい。
「っ…子桓様?」
「…堪えられぬ」
衝動的に押し倒し、そのまま仲達に当てがう。
ローターを当てていたので充分解れている筈だ。
我慢をしていた訳ではないのだが、私のは固く勃ち上がっていて仲達には少々きついかもしれない。
「…こんなに…して…」
「っ…!」
仲達が私のに触れ、眉を寄せて熱く吐息を吐いた。
胸に手を置くと動悸が激しく、仲達の心音が解る。
緊張しているのか、その表情は快楽に溶け艶々としているが不安の色も垣間見えた。
「入れるぞ。仲達、力を抜け」
「…っ、待っ、て下さい」
ローションとローターのせいで充分に慣らされたであろう体は、指を二本入れても裂けるような事はなかった。
柔らかく解れている事に安堵する。
傷付けたくはない。
故に仲達と同意のない情事もしたくない。
仲達は目を瞑り深く溜息を吐くと、私の首に両腕を回して口付けた。
甘える仲達に応え、頬や耳を甘く噛むように口付けると仲達は嬉しそうに笑う。
「ん…、早く、入れたいのだが」
「まだ、駄目です…」
「焦らすな…仲達、早く」
仲達に押し当てて耳を甘く噛む。
早く入れて泣かせたいのだが仲達が良いと言わなければ、私はこれ以上手を出せない。
仲達はまだ駄目だと焦らし、私のに触れて退けた。
「…起こして、下さい」
「?」
言われるがまま仲達の体を起こす。
そのまま技をかけられたかのように視界が回り気付けば仲達に押し倒されていた。
仲達は私の上に乗り、してやったりと言う顔をして笑む。
「ふ、油断大敵、ですよ」
「お前の前で油断も何も…、仲達?」
仲達は私のを後ろ手に握り締め、己に当てがうように腰を落とした。
視界には仲達しかいない。
「…私も、して差し上げたい…」
「…腰を痛めるぞ」
「なれば…腰を支えていて下さいませ」
仲達に言われるがまま、両手で細腰を支える。
上から手を重ねて仲達はゆっくりと腰を落としていく。
指を絡めて手を握った。
厭らしい水音が響き、仲達を貫いていく。
中はきつく、熱い。
仲達も待っていたのだろうか。私のを締め付けていく。
下を向く仲達の頬から止めどなく涙が零れて、思わず腰を支える手に力が入る。
仲達は私の手に触れて、首を横に振った。
「私は大丈夫…。ですから、見てて、下さい…子桓様」
仲達は眉を寄せて笑い、深く息を吐いてまた腰を落としていく。
煽る気はないのだろうが、懸命に何とか自分で入れようとする仲達が愛しくて堪らない。
尻が漸く私の腿に着いて、奥まで入ったようだ。
小さく震え、仲達は私を見つめた。
「…よく出来た」
「ん…」
「動いても?」
「…まだ…」
その後の言葉が声が小さい為に聞こえない。
仲達の涙を拭い、頬を撫でた。
私よりも九つも年上であるのに、仲達は歳など感じさせない。
「まだ、何だ?」
「っ、ん…!」
「良かった…傷付けてはいないのだな」
仲達の腰を引き寄せ、接合部に触れて指を入れた。
きつく締め付けられてはいるが、ローションの滑りのお陰で仲達の体は傷付いていない。
初夜の時は傷が酷かったのを思い出し、指を抜いて腰を撫でた。
「…っ、動き、ます…」
仲達が深く息を吐く。
私と指を絡めて手を繋ぎ、仲達はゆっくりと腰を浮かせ、上下に揺らした。
「っ…、痛む、か?」
「ん、っ…っふ、んん…っ!」
「腰を揺らしてみろ…こうして…」
「ぁ…っや、っ…んっ…あ…!」
仲達の上下する腰をくねらせるように、下から突き上げた。
感じてはいるのだろう。
だが、ぽろぽろと止めどなく零れ落ちる涙が気になる。
仲達の腰を引き寄せ、体を起こして頬に触れた。
「っ、子桓様…?」
「何を考えている。言ってみろ。聞いてやる」
「こわ…い…」
「…解った」
仲達は私の肩に額を乗せて、泣いた。
怖いのならこれ以上、手を出せない。無理強いはしたくない。
細い肩を抱いて、抜いてやろうとするも仲達はそれを拒み首を横に振った。
「自分が…どうにかなってしまいそうで、こわい…のです…」
「…?」
「私は、淫ら、でしょうか…貴方にもっと、抱かれたいと…思ってしまう…」
「否、綺麗だ。それはつまり…感じているのだろう?」
「…っぅ」
「何が怖い?」
「このまま…快楽に堕ちてしまいたいと思っている…自分がこわい…のです…。
自分がどうにかなってしまいそうで…」
感じてはいるのだろう。
ただそれが今までに感じた事がないくらいだと言う事だろうか。
体に与えられる快楽に、仲達の頭がついていっていない。
こんなのは自分ではないと、快楽に変わる自分が怖いのだろう。
仲達は苦痛を伴わない、快楽のみの情事は初めてなのだろうか。
「なれば…」
「っ…?!」
そのまま仲達を寝台に押し倒し、そのまま抜き差しを繰り返して突き上げ続けた。
仲達が仰け反り、急激に与えられる快楽に喘ぎ、声を上げる。
「…怖いと思う暇も与えぬほどに、感じさせて、抱いてやる」
「ゃ、ぁ…あっ!」
「加減が…っ、出来ぬやもしれぬ…が、お前を…壊すような事は、絶対にしな、い」
「は、い…」
指を絡めて手を握り締め、仲達に何度も口付けた。
仲達が果てても、私が果ててもそのまま奥に突き上げ続けた。
ローションと白濁が混ざり、厭らしい水音が部屋に響く。
「っ…ぁ…!」
果てる際、仲達は一際締め付けてとろけた顔を見せて果てる。
仲達の顔を見てしまうと、どうしても止める事が出来ない。
私もどうやらかなりたまっているらしい。
きつく締め付ける仲達の中に果て、仲達の胸を吸いながら更に奥に突き上げた。
無意識なのか、仲達は私の腰に脚を絡めて離さなかった。
まるで生き物の本能である交尾のように、仲達を激しく抱いて中に注ぎ込んだ。
「仲達、…っ仲達…」
「も…、だ、め…、む…り…っ」
「愛して、いる…」
「しか、んさま…っ」
何度目なのか解らないほどに注ぎ込み、仲達も果てて、漸く突き上げるのを止めた。
肩で息をする私に対し仲達は軽く気を飛ばし、胸を激しく上下させて息をしている。
その胸に埋まり、目を閉じた。
互いの下半身が白濁に汚れて厭らしい。これは明日が辛いだろう。
そっと髪を撫でられる心地に目を開けると、
仲達が快楽に甘くとろけた瞳のまま私を見つめていた。
「大丈夫、…ではないな」
「はい…」
「抜くぞ」
仲達が疲れたように笑い、漸く私の腰から脚を下ろした。
腰に触れ、ゆっくりと引き抜くと仲達の股を伝うほど白濁が溢れた。
さすがにやり過ぎたか。
体がまだ痙攣しているのか、仲達は目に涙を溜めて震えていた。
腕に頭を乗せて横になり、その体を抱き締める。
「…怖かったか?」
「もう…平気…です」
「傷がなく良かった。いつもは…痛みを伴っていたのだな…」
「いつも…って何ですか?」
「…ん?」
「私達はまだ…始まったばかりでしょう…?」
「…ああ、そうであった」
仲達が微笑み、目を閉じる。
もう何十年も一緒に居たようなつもりになっていた。
実際に仲達と再会し、このような関係になってから一週間ほどしか経っていない。
故にこの情事もまだ二回目なのだ。
二回目にしては、配慮も気遣いもない抱き方をしてしまったと自分を恥じる。
過去、仲達は私に抱かれながらただ黙って苦痛に堪えていた夜もあっただろうに。
初めて快楽のみの情事に浸れたであろう仲達は、本当にとても愛しかった。
全てを思い出した仲達は、漸く私を真正面から受け止めてくれたように思う。
今までの仲達は過去を引きずり、喪に服しているかのように何処か暗かった。
疲れて笑う仲達に、ほの暗さは感じられない。
仲達は私の頬に手を伸ばし、摩るように撫でた。
「…年頃のいい男が…こんな大人に、本気で惚れちゃ駄目ですよ…」
「生憎だが、年上の美人が好みでな。それにもう…手遅れだ」
「今更、こんな私にまた恋をさせるなんて…子桓様には適いません…」
「…私は何年も待ったのだぞ」
「…デート…」
うとうとと目をこすり、仲達が仲達らしからぬ単語を発した。
思わず仲達に向き直り見つめる。
「…今の気分なら、デートしても…いいです…」
「本当か?」
「…とても…気持ち、良かったの…で…」
「そう、か」
仲達は頬を赤らめて私の胸に埋まりそう言った。
顔は上げてくれそうにないが、私も顔を見せられそうにない。
どうしてもにやけてしまう。
恥ずかしそうに、良かった…と仲達は小さく私に言った。
それが途轍もなく嬉しい。
「でも、今週末は駄目です。昭に呼ばれているので」
「生憎だが、私も三成に呼ばれている」
「そう、ですか」
「…淋しくさせるな」
生憎、互いに予定が埋まっているらしい。
予定を埋めてしまった事を惜しく思ったが、仲達も予定があるのなら仕方ない。
この連休中、仲達の気の変わらぬうちに何処かに連れて行ってやりたいものだ。
仲達は再び私を見つめ、頬を寄せた。
その頬に擦り寄るように口付ける。
「…私はもう、淋しくありません…貴方は今、生きて此処にいます」
「仲達」
「過去は過去。
この現代で、また貴方との日々が始まるのなら…こんなに幸せな事はありません…」
「幸せだと、そう言ってくれるのか」
「はい…」
仲達は目を閉じた。
かなり疲れさせてしまったので無理もない。
私も相当眠いのだが、仲達をこのままには出来ない。
出来る限り仲達の体を清めて着替えさせ、ベッドのシーツも変えた。
寒がりの仲達に何枚か毛布をかけてやり、私も隣に横になった。
仲達は大人しく敷布に丸まり、私に礼を言う。
隣に座り、頭を撫でる。
「…一緒に、寝てもいいか?」
「今更…私が断るとでも、思ったのですか?」
「いや、お前の言葉が直接聞きたかった」
「どうぞ…子桓様」
布団に入ると仲達から私の胸に埋まってきた。
その背中に腕を回し、抱き締める。
「…明日は…」
「流石に連泊は子供達に悪い。部屋に帰る」
「…そうですか」
「昼までは…傍に居てやれる」
「…良かった」
随分と仲達は素直に笑うようになったと思う。
ふわりと柔らかく笑うようになった。
感情も意思も私に直接伝えるようになった。
酷く疲れさせている為、仲達はそれきり静かになり眠りについた。
愛しい。
時代と世論が許せば結婚したい。
それ程までに仲達が愛しくて堪らない。
私にとって性別や離れた歳など関係なかった。
ただひたすらに仲達が愛しい。
「…おやすみ…」
眠る仲達の額に口付けを落とし、引き寄せて胸に埋めた。
今朝。
温かさに目を開けると、子桓様が布団を引き寄せ私の胸に埋まるように眠っていた。
口や態度ではとても頼もしく自制した方であるのに、寝顔は幼い。
日常でも無意識でも、私にだけ唯一甘えてくれるのが嬉しかった。
肩を引き寄せ、髪を撫でて額に口付けそのまま暫く目を閉じる。
子桓様から私の白檀の香の匂いがした。
暫くすると子桓様は目を覚ました。
腰が立たぬほど酷い状態の私を抱きかかえて朝一番真っ先に体を清めてくれた。
体を痛めぬよう、子桓様は私を労り最大限優しく触れて清めてくれた。
後ろから抱き締められる肩に頬を寄せて、子桓様の唇に口付けた。
子桓様が私を愛して下さるよりもそれ以上に、私は子桓様を愛している。
私からの一度だけの口付けに対し、子桓様から倍以上の口付けを受けた。
キッチンからいい匂いがする。
どうやら粥を作っているらしい。米の匂いだ。
「好きなのだろう、粥」
「はい。ですが何故?」
「今朝早く起きて、それからずっと煮込んでいるところだ」
ソファーにバスタオルで包まれて座らせられ、髪を丁寧に拭かれる。
服を着た後、子桓様は至極丁寧に私の濡れた髪を拭き櫛を使ってドライヤーで乾かして下さった。
私を撫でる子桓様の手が心地好い。
髪を扱う視線が真剣で、作業が終わると満足したかのように背後から私の肩に埋まった。
バスタオルで子桓様を捕まえ、お返しに髪を拭いて差し上げると子桓様は嬉しそうに目を閉じた。
バスタオルの中で額を付けて子桓様と口付ける。
「…ふふ」
「ん?」
「こういう事が、恋人とだと言う事なのでしょうか?」
「主従ではない故、対等で良かろう?ずっとお前とこうしていたい」
「はい…とても幸せです…」
頬を両手で包まれて子桓様がもう一度触れるだけの口付けをしてくれた。
ぱたぱたとスリッパを履いて子桓様がキッチンに向かう。
料理をした事のない人が一人で大丈夫だろうか。
心配しながらもバスタオルを頭に被り、ソファーに寝転びながらキッチンの方を見た。
暫くしてまた子桓様が私の所に来て、温かいお茶を入れて下さった。
どうやら我が家の台所の物の配置は分かっているらしい。
「私、そちらに行きますよ」
「腰が痛むだろう。それに寒い」
「粥はどこまで出来たのですか?」
「…味付けが解らんだけだ」
「子桓様たら」
重い腰をあげてゆっくり歩いて子桓様の隣に来た。
子桓様が私の腰に手を回し、後ろから支えて立つ。
鍋を見るととろとろに鶏肉と粥が煮込まれていた。
軽く塩と鶏ガラの素を入れて、小皿に取り子桓様に渡した。
「どうぞ」
「…美味い」
「貴方が作ったのですよ。よく出来ました。あとは葱があるといいですね」
「包丁は苦手だ」
「練習しましょうか」
包丁が苦手なのでいつも葱は既に切れているものを買っているらしい。
それでは量が少なく勿体無いでしょう?と諭し、子桓様に包丁を握らせて上から手を握った。
歪ながらも子桓様は私の手解きの通りに、手を切る事もなく何とか葱を切る事が出来た。
子桓様とこんな事が出来るなんて、新鮮で嬉しい。
何だか昔を思い出してしまう。
殆ど子桓様が一人で作った粥に、私が味付けをして歪な葱をのせた。
子桓様が二人分の器を足早にソファー前のテーブルに持って行くと、キッチンに戻り私を横に抱き上げた。
「歩けます、のに」
「私がこうしたかった」
「なれば貴方に甘えましょう」
「…昔を思い出して楽しかった。礼を言う、仲達」
「こちらこそ」
ソファーに隣同士に座り二人で鶏粥を食べた。
私が鶏粥が好きだと具材まで聞いたのだろうか。
柔らかく煮込まれていてとても美味しい。
何より子桓様が私の為に初めて苦手な料理をしてくれたのが嬉しかった。
「…さて、半日だけだが、今日はどうしようか」
「このままずっとこうしていたい…」
「ずっと?」
粥を食べた器を置いて、子桓様の肩に凭れると子桓様が私の肩を引き寄せる。
「貴方に甘えていたい…仲達で居たいのです」
「同意見だ。私もお前の子桓で居たい」
「ごろごろしていたいです…寒いですし」
「お前は寒がりだな」
「まだまだ冬です。春には早いでしょう?」
「なら、温めてやろうか」
「…昨晩あんなに…」
ふと昨晩の激しい情事を思い出してしまい顔を見せぬよう、胸に埋まった。
とてもはしたない声を出してしまった。
あんなの私じゃない。
「…お前を一人占め出来るのは良いな」
子桓様が私を引き寄せ胸に埋めたまま、ソファーに横になった。
「たまには良いな、こういうのも」
「たまには…」
「眠いか?」
「ん…」
子桓様の体温が温かくてそのままうとうとと目を閉じた。