仲達の顔を見れて、漸く気持ちが落ち着いた。
実はかなり前から記憶はあったのだが仲達には言わないでおく。
御陰様でいいものが見れた。
やはり私の恋人は綺麗で艶めかしいが、そこに厭らしさはない。
ただ純粋に私を愛してくれていると感じられた。
小さな子供の体になってから久しぶりに仲達を見上げて歩いた。
仲達は大きくて温かくて、優しくて…やはり私は仲達が大好きだった。
だが本心では、仲達も私と同じ様に寂しがりやだったのだ。
若さ故か、未だ体力は有り余っている。
身長差のせいで仲達が屈むように私の口付けを受けた。
先程果てさせた仲達の体はまだ火照ったままだ。
子供の姿の私に体を好きなように弄られて、仲達は堪えきれずに私の手の中で果てた。
いけない、駄目だと言われると尚更に手を出したくなる。
私がこのような年齢だった頃は、新任の教育係だった仲達に一目惚れをしたとはいえ。
ここまで大胆な行動は起こせなかった。
私が好きだと好意を伝えたところで、私もですよと軽く受け流す返答ばかり。
仲達は私を子供扱いするばかりで、まともな返答などくれなかった。
恋仲になれたのはあれから五年以上先の話だ。
改めて小さくなった子供の視点から見ても、やはり男であれ仲達は美人の部類だ。
何より私にはゆるりと微笑む。
昔からずっと仲達だけが私の傍に居てくれた。
ここ数日の擦れ違っていた時間を取り戻すように、私から何度も口付けを繰り返す。
私はずっと寂しかっただけなのだ。
その気持ちを正直に伝えたら仲達もそれを解ってくれた。
本当に伝えたい事は雰囲気や機嫌などでは気付ける筈もなく、言葉にしなくては伝わらない。
口付けを繰り返す度に仲達の息が上がっている。
どうやらこの姿でも感じさせる事が出来るらしい。
元の姿に戻れば好きなだけ抱けようとも、私は今この仲達を抱きたくて仕方ない。
仲達もずっと寂しかったのだと直接私に伝えてくれた。
しかし子供だからと、仲達は頑なに首を振る。
「…いけません。子桓様、これ以上は…」
「嫌だ」
「明日、体が元に戻るのでしょう…明日まで待てませぬか」
「私がどれだけこのような時を待ったと思う?」
「…それは…」
「子供扱いするな」
仲達は眉を寄せて困惑した顔を見せた。
困らせているのは解っている。
返答の代わりに私を抱き寄せて、肩に顔を埋める。
正直、今すぐにでも抱いてやりたい。
私も仲達も相当性欲がたまっているとみた。
私とて仲達以外は抱かず、仲達に会うまではと堪えていた。
きっとこの体では仲達を満足させてやる事は出来ないだろう。
私との情事に慣れている体なら、物足りない筈だ。
だが、私の肩口で大人だからと果てるのを堪える仲達を見てしまった後ではもう、
溢れる情欲を堪えられそうにない。
仲達の肩を掴みそのまま寝台に寝かせるように押し倒した。
「押し倒してしまえば、身長差も関係あるまい」
「…駄目、です…私、堪えられます…だから」
「嘘を吐け。もうこのように反応させているというのに」
「っ、いけません…あなたが…欲しく、なってしまいます…」
「…生憎、この体では満足はさせてやれぬな」
「っふ…ぅ…!」
仲達の中に指を入れると柔く締め付ける。
私の小さな指では足りぬのだろう。
指を曲げると私の肩を掴み、仲達は首を横に振る。
「だ、め…です…っ」
「指だけでも…こんなに締め付けているではないか?」
「…言わないで…下さ、ゃ…!」
私を股に挟むように、仲達は頬を染めて脚を閉じる。
中の指を動かすのを止めず、体を震わせる仲達の頭を撫でて頬に口付ける。
じわじわと体が焦らされて苦しいのだろう。
仲達も私の首に腕を回し、額や頬に口付ける。
今の体の小ささでは抱き締めたところで、仲達の胸にすっぽりと埋まってしまう。
「…仲達」
「は、い…」
「仲達の…中に入れたい…」
「で、も」
「私のでは足りぬだろうな…。解ってる」
「…っ…ん」
「入れる。仲達の中に…」
「…子桓様」
子供の体では物足りぬ大きさなのは解っている。
仲達の中から漸く指を抜き、私のを当てがい挿入した。
仲達は羞恥心に顔を赤らめて私の肩口に埋まる。
つぷ、と仲達の中に入れ何度か突き動かすように抜き差しを繰り返した。
仲達は息を漏らし、目を瞑り肩を震わせている。
物足りぬのだろうし、もどかしいのだろう。
仲達の良いところを知っているとはいえ、其処を突き上げる程の大きさはない。
それでも仲達の体は心地良く締め付けていて、私のは絶頂に近付く。
「中に出し…たら、違うものを…入れてやる…」
「…違う、もの…?」
「っふ…、お前のがまだ…だからな」
「ぁ…」
注ぎ込むように仲達の中に果てた。
若い体のせいか、量も多く濃い。
そのまま直ぐに抜いて、肩口に埋まる仲達の背から手を伸ばし陰茎の形に彫られた玩具を手に取った。
「ぁ…、子桓様…?」
「物足りぬだろう。そのまま力を抜いていろ」
「な…に…入れ、て…っ?」
「今の私のよりは良かろう?」
肩口に埋まる仲達をそのまま押し倒して、玩具を当てがいそのまま中に埋めていく。
仲達の体がぞくぞくと震えているのが解った。
この大きさなら仲達を突き上げる事も出来よう。
先に中に出した滑りもあって、仲達の体は傷付いてはいない。
抜き差しを繰り返す度に仲達の体が震え、股は白く汚れた。
敷布を握り締め、仲達はぽろぽろと涙を零している。
中を突き上げる動きを止めず、押し倒すように胸に埋まると仲達が首に腕を回した。
ゆるゆると勃ち上がった仲達のが、私のに当たっている。
突き上げる度にくぐもるような嬌声をあげながら、仲達は私を抱き寄せて私の字を呼んだ。
「しかん、さま…しかんさ…、ま…」
「何だ」
「…戻った、ら…、私を…抱き締めて…下さ…い…」
「ああ…無論」
「…っ、私…、もっ…ぅ…」
「…果てるがいい。今まで我慢させた」
「あ…、ぁ…っ」
突き上げ続けて仲達は漸く果てた。
体を痙攣させながら私を抱き締める。
耳元で仲達の声が響く。
果ててくた…と脱力した体から引き抜くと中にある私のが白く糸を引いている。
まだ小さく痙攣させている仲達の体を引き寄せて頭を撫でた。
仲達はゆっくりと目を開けて私を見つめる。
目尻にはまだ涙が溜まっていた。
「大人の私を泣かせるなんて…いけない子…ですね」
仲達は自分で涙を拭いながら、私を胸に埋め額に口付ける。
果てたばかりの艶やかな色気に、見てはいけないものを見ているような気がして、
目を反らそうにも反らせなかった。
本当はあんなもので果てたくはなかったのだろう。
仲達はまだぽろぽろと涙を零していた。
「正直、これは使いたくなかったのだ…。仲達も果てさせてやりたかった…だから」
「…もう、いいです…済んだ事でしょう」
「…ごめんな」
「大丈夫ですよ…もう、気になさらないで」
「…体は、痛むか?」
「平気です…。…泣かないで、子桓様」
「え?」
「…可愛らしい人」
いつの間にか私も泣いていたらしく、仲達に涙を拭われた。
よしよしと慰められるように、仲達に頬を撫でられて胸に埋まる。
また完全に子供扱いをされているが、今はそれも良いかと思いそのまま仲達の胸に甘えた。
仲達の体を清めて、着替えの着物を渡した。
まだ私の体は戻らない。
着替えの終わった仲達の腰に埋まるように、後ろから抱き締めた。
抱き締めたところで、抱き付いたようになってしまう。
体格差がありすぎて抱き締められない。
仲達が私に気付き、振り向いて床に膝を付いた。
少しつま先で立つようにして、何とか仲達を抱き締める。
仲達が私の背中に腕を回すようにして、抱き寄せた。
「どうしました?」
「ん…私の勝手な思い付きで、お前を独りにして淋しくさせた…すまなかった…」
「いいえ、そんな事はありませんよ」
「しかし」
「あなたはずっと私の傍に居て下さいました。さっきだって…私を気遣って下さったのでしょう」
仲達が私の頭を撫でながら笑った。
私はずっと、この変わらない笑みに支えられてきたのだろう。
「明日になったら…たくさん抱き締めてやれる…」
「はい…」
「でも今は…子供でいたい…」
「なればもう少しだけ、私に甘えられませ」
先とは正反対の事を言っている気がする。
仲達がふわりと私を胸に抱き締める。
仲達の体温が心地良くて目を閉じた。
「ん…。仲達と風呂に入りたい。仲達と食事を共にしたい。仲達と一緒に寝たい」
「はい。構いません」
「…仲達とずっと一緒にいたい…」
「いいですよ。そうしましょうね…子桓様」
先は無体を強いてしまったが、仲達はそれを気にも止めず私と手を繋いで歩いてくれた。
本来ならば私が仲達を横に抱いて歩きたいところだ。
何もかもが不安で、幼かったあの頃のように私は小さい。
対する仲達の手は温かく優しく大きかった。
仲達と出会ってから私の世界は変わったのだ。
仲達と手を繋いで食事をするべく中庭を歩く。
夜風が容赦なく冷たく私の頬に当たり寒い。
部屋の扉を開いて中に入って直ぐに仲達が私の前に膝を付いた。
「寒かったでしょう」
「お前こそ」
「手を出して下さい」
言われるままに冷たくなった手を出すと、仲達は両手で包み込み息を吹きかけた。
仲達の吐息が伝わり温かい。
寒さで仲達の鼻先や耳も赤くなっていた。
手先が温かくなったところで仲達に抱き付くようにして頬を合わせた。
仲達の頬は冷たい。
猫のように頬を擦り寄せると、仲達はくすぐったそうに笑った。
「ふふ、ありがとうございます」
「ん」
先の礼に仲達の頬に口付けると、お返しのように仲達も私の額に口付けた。
それがひどく照れくさい。
それから仲達と隣り合うように座り、食事をした。
対面に座るように促されたのだが、敢えて隣に椅子を運んで座った。
子桓様たら、と仲達が笑っていた。
芯から温まるようにと、生姜の効いた汁物を貰う。
熱すぎて手を出せずにいると、仲達が気を利かせて取り皿に掬い少し冷めたものを私にくれた。
時には匙で口まで運ばれて、至れり尽くせりといった心地を味わった。
食事を終えて、湯も浴びて。
何をするにも仲達と二人きりで過ごした。
懐かしい時間は緩やかに流れていく。
湯上がりに仲達が私を大きな布巾で包み込む。
顔や髪を拭かれ、布巾に包まれながら仲達に手を伸ばし口付けた。
舌は絡めず、触れるだけの口付けを何度も。
「…どうしたのです?」
「もう…終わってしまうなと、そう思ったら名残惜しくなった」
「この姿が、ですか?」
「この時間が、だ」
「名残惜しい?」
「戻ったら、仲達に…甘えられなくなる…」
「…ふ、何を仰いますやら」
「?」
仲達は私に服を着せながら笑う。
髪を横に流して肌着を身に付けながら仲達は話を続けた。
「…変わらず、私にだけ甘えたらいいでしょう。ただ執務はきちんとして下さいね」
「む…」
「どんな姿になろうとも、あなたは私の子桓様ですから」
「…そうだな」
「司馬仲達は、曹子桓という男が好きなのです…」
「!」
「もう、言いませんからね」
仲達は頬を染めて顔を背けた。
仲達からの突然の告白に私も顔が熱い。
「顔が赤いですよ」
「お前こそ」
「…寝台に横になりましょう。もう破廉恥な事はしちゃ駄目ですからね」
「何だ。信用がないな」
「駄目です。駄目と言ったら駄目なのですから」
「ん…残念だが仕方ない」
仲達と手を繋いで部屋に戻った。
先の行為の跡は既に片付けられており、敷布も布団も既に換えられている。
寝台に先に横になりふわふわとした毛布に埋まっていると、
仲達が寝台に腰を下ろし髪を櫛でとかしていた。
後ろに立って、私がやると言うと仲達は櫛を渡してくれた。
黒髪の長髪を櫛でとかしていく。
時刻は寝台に入るにしては未だ早い時間だった。
髪の手入れが終わると、仲達は座り直して自分の膝を叩く。
首を傾げながら駆け寄ると、仲達は膝枕をしてくれた。
「生憎、女ではないのでそこまで柔らかくはありませんが…」
「いや…心地良い」
「武人ではありませぬ故」
頭を撫でる仲達の手が心地良い。
だがまだ眠りたくない。
目を擦り、仲達の方を向いて腰に抱き付いた。
「?」
「まだ、眠りたくない…」
「でも、眠いのでしょう」
「眠くない」
「手が、眠い子の手ですよ」
仲達が私を抱き上げるようにして寝台に横になり、
腕枕をして私に布団を掛けて背中をぽんぽんと叩く。
目を擦り、仲達の胸に埋まるようにして擦り寄った。
「どうしたのです、子桓様」
「仲達」
「はい」
「…仲達」
「此処におりますよ」
「…愛している…」
「…はい。私も愛しています」
額に口付けられ、頬を仄かに染めた仲達の顔を見たら心がとても落ち着いた。
仲達に背中を優しく叩かれているとひどく眠い。
仲達は子供の扱いに長けているようだ。
「仲達…」
「はい」
「元に戻ったら…たくさん…口付けて…抱き締めてやる…」
「…はい。お待ちしています」
「だから」
「はい」
「今だけは…仲達の胸に埋もれていたい…」
「良いですよ。私もあなたを離しませんから」
「…?」
「…今の子桓様は、とても素直で可愛らしい」
「そんな事はない」
「ふ、おやすみなさい」
頬を撫でる仲達の手が温かくて睡魔に負けた。
おやすみの口付けを額に受けて、仲達の胸の中で眠りについた。
なくした子供の時間はもう、おしまいです。
夢の中でそう言われた気がした。
まだ朝靄も晴れぬ中、目を開けると仲達の体が小さく思えた。
約束通り仲達の腕の中に埋まったまま三日目の朝がきている。
どうやら体は元に戻ったらしい。
眠っている仲達を起こさぬよう静かに腕から逃れ、服を着替えて姿見で全身を確認した。
特に異常がある訳でもなく、無事に元に戻れているようだ。
早朝の冷え込みに背中が冷え、布団に戻る。
今度は私が仲達を抱き締めるようにして寝台に横になった。
脚の冷たさに仲達が擦り寄るように布団の中で脚を絡める。
体の大きさの違いに気付いたのか、ぼんやりと目を開けた。
「おかえりなさい…」
「…ただいま、仲達。心配をかけたな」
「まだ…私に甘えて、いいのですよ…」
「そうさせてもらう」
仲達に触れるだけの口付けをして再び目を閉じた。
冷えた体に仲達の体温は温かく、私の頬に仲達が擦り寄る。
「…今度は私がお前を甘やかす番だ」
「甘えて、いいのですか?」
「ああ…勿論、お前なら」
「なれば暫くこのままで…」
まだ起きるには早すぎる。
仲達は私の腕を枕に甘えるようにして擦り寄りまた目を閉じた。