先生せんせい生徒せいとでいたよる

ここ数日、いろいろな事があったせいかなかなか仲達と共に過ごせる時間がなかった。
確かに共に居たと言えば、共に居た事にはなるのだが。


父に許され、二人とも執務が片付いているため半休を貰った。

このところの私の世話で仲達の執務が停滞しがちだったのだが、
疲れて私の膝上で眠ってしまった仲達を見てしまうと起こす気にはなれず。
どうせ私に回ってくる書簡で、私が出来ない事もないので仲達を寝かせたまま書簡は全て片付けた。

暫くして起きた仲達に執務が終わった事を伝えると、
至極申し訳なさそうにしていたが、私を褒めて頭も撫でてくれた。
先日の出来事のせいか私を少々子供扱いする気がする。
別に悪い気はしない。

先生と呼ぶと、仲達が良い、と言う。
先生と生徒で居るよりは、字で呼ばれたいらしい。
それには私も同意して、仲達の字を沢山呼んだ。



今日はずっと一緒に居よう。
そう仲達に伝えると、仲達は静かに頷いた。
久しぶりの休日の緩やか時間の大半を仲達と過ごし、夜も更けていく。



今日は一里どころか、一尺たりとも仲達の傍から離れていないような気がする。
夜風を当てぬよう、仲達を引き寄せ寝台の帷を下ろし燭台を引き寄せた。

「寒くはないか」
「はい…今日はあなたがずっと傍に居て下さいましたから」
「寂しくはないか」
「はい。とても幸せです…」

私の肩に凭れて仲達は目を閉じた。


夜になったらしても良いと言われた事。
仲達は覚えているだろうか。
目を閉じる仲達の耳元で囁くと、仲達は頬を赤らめ首を横に振った。

「もう一度、言って下さい…よく聞こえませぬ」

いや絶対に聞こえていただろう。
誤魔化す仲達に向き直り、改めて言った。

「ふ、何度でも言う。授業の続きをせぬか」
「授業…と申されましても、もうあなたに教える事なんて」
「ない、と申すか。私は仲達の気持ちを知りたい」
「私の気持ち?」
「先生、恋人になった後はどうしたら良いのだろうか」
「…っ」

私に向き合うように仲達を膝に乗せ、唇を指でなぞった。

子供の時は、どうしたら恋人になれる?と仲達相手に聞いていたような気がする。
仲達は逃げずに私の思いに向き合ってくれた。

「こいびと…」
「恋人となったら、何をする?」
「…口付けを、したり」

唇をなぞり触れるだけの口付けをした。
仲達の言う事を私がそのまま行動に移す旨を伝えると、仲達は顔を背けて口を抑えた。

「何故、そのような事…」
「次は何だ、先生」
「先生って、言わないで下さい」
「今は授業中なのだろう?」
「っ…、もう…いいです…」

仲達は溜息を吐きながら私に口付け言葉を続けた。

唇への口付けは好意を相手に示す事。
口付けを許すという事はその人を受け入れるという事。
仲達はそう言うと再び私に口付ける。
無論、私は仲達を受け入れて唇を合わせ腰を引き寄せた。

「あなたは私を受け入れてくれましたか?」
「無論。お前しか見えない」

ふ、と笑い何度も口付ける。
嬉しそうに笑う仲達が、年上とはいえ可愛らしくて仕方ない。
深くなる口付けに仲達が吐息を吐きながら、耳元で囁いた。

「恋に盲目的になると、身を滅ぼしますよ」
「何故」
「…恋に夢中になったら、何事にも集中出来なくなるでしょう?」
「違いない」
「あなたは私に恋をした時、どのような気持ちだったのですか?」

仲達の襟口の釦を外し、胸元に手を入れて胸を摘んだ。
仲達が小さく体を震わせて目を瞑る。

「…このように触れて」
「っ、はい…」
「身も心も、お前の全てを手に入れたいと思った」
「私を、っん…どうしたいのですか?」
「私だけのものにしたい。
お前の事になると私は盲目的で、危ういかもしれぬ。
誰にも触れさせたくない…ずっと何処かに閉じ込めてしまいたいとさえ思う…」
「…随分、惚れさせてしまったのですね」
「実行する気はない。仲達の自由を奪うのは意に反する」

もう引き返せない程に、私は仲達を愛してしまった。

胸を吸うと、仲達は私の首に腕を回して抱き締めるようにして身を震わせた。
もっと、とせがまれているように思えて、強く吸い痕を付けると仲達は私の頬を撫でた。

「艶やかで…美しい、先生だな」
「そんな事…」
「当たっているぞ。感じているのか?」
「…は、い」
「随分、素直ではないか」

胸を吸われただけで仲達のが私の腹に当たっていた。
素直な仲達の物言いにそれを服の上から擦ると、仲達は私の顔をはだけた胸に埋めて耳元で話す。

「房中術には…疎いのです。あなたの方が経験があるでしょう?」
「そんな事は問題ではない。お前がどうされたいのか聞いているのだ」
「私の気持ち、と言う事ですか?」
「そうだ。恋人として、生徒の私にどうされたいのだ先生?」
「…そのような仰り様…困ります…」
「何故?」
「いけない事を、しているようではありませんか」
「いけない事とは?」
「ああ…もう…」
「私は先生自ら、教えて欲しいものだが」

仲達の顎を掴み笑むと、仲達は頭を抱えた。
照れ隠しなのか、私から逃げるように離れた。

逃がさぬように押し倒し、股を広げさせ脚を掴む。

「仲達」
「するなら早く、して…下さい…」
「何を?」
「っ…言わせないで…下さい…」
「言葉で言えば、楽にしてやれる」
「うう…」

半分、仲達を苛めているような気分だったが別に苦しめるつもりはない。
せっかく仲達と長い時間を共に居れるのだから、ただ果てさせてしまってはつまらないではないか。

仲達が愛しい事に変わりはなく、偽りもない。
ただお互いを再確認したいだけだ。

「なれば…私が、あなたに講義致します…。それで満足ですか?」
「ふ、結構ではないか。しかと記憶するとしよう」
「…お忘れなさい」
「それでは講義にならん。実況してくれるのであろうな?」
「はっ?!」

仲達の提案に勝手に言質を取って下半身の服を脱がせた。
白い脚に唇を寄せると、仲達は目を反らして押し黙る。

拗ねているようだ。
どうやら反論は諦めたらしい。

「…もう、あなたの好きになさい」
「なれば、先ずは果てさせてやろう」
「え?」
「もう、果てたいのだろう?」

下着を脱がせると、仲達のは勃ち上がっていた。
仲達のに手を添え、そのまま口に含む。
突然の出来事に仲達は身を起こそうとするが、私が止めさせた。

「っ、駄目です…、そのような事…、子桓様がなさっては…」
「口淫とは、何か」
「え…?」
「私がしてみせる故、仲達なりの解釈を述べよ」
「…どちらが先生ですか、もう…」

恥ずかしくて顔も見れない。
仲達はそう言うと枕に顔を埋めて背けてしまった。

「口淫とは…、っん…」
「そのまま、続けろ」

枕に顔を埋めたまま仲達が話す。
私も仲達のを口に含み、口淫を続けた。

「嫌がる者にさせるなら…それは陵辱、っ…処罰の行為のひとつとになり…、
恋人や…夫婦が、相手に、して差し上げるのなら…、っ…!…奉仕、となり、えます…」
「なれば、私が好きな仲達にしてやれるのは奉仕になるな?」
「言わせないで下さい…、本来、目上の者がする行為ではないのです…」
「何故?」

確かに立場的には私は仲達よりも上の立場にはなるが、
仲達は私よりも一回り年上で仲達の方が目上だと思う。

奉仕を続けると、仲達は脚を閉じ私の体を挟んだ。
小さく震えているその体は呼吸が荒く、胸で息をしている。
感じてくれているその姿を見ると、私も感じる。

「御奉仕…とはいえ、男の一物を口に含む行為。
…同じ男なら屈辱的…、そう思うのが普通…、です」
「私はそうは思わない」
「あなたがそう思うのは私だから…でしょう?」
「無論」
「…元来、力を誇示し相手を屈辱的に嬲るようなもの…。
屈辱である事の方が、まだ意味合い的に強いです…」
「愛しい人の喘ぐ顔が見てみたい、私はそう思うがな」
「っふ、…それは、そこに愛がある、から…っ」

荒く息をする仲達の胸に触れ、仲達のに舌を這わせた。
仲達は私の手を握り、肩を震わせる。
枕をどかすと仲達は泣いていた。

限界なのだろう。ぽろぽろと生理的な涙が流れていた。

「…愛し合っているのなら、それは…褒美にもなりえましょう…」
「ふ、なれば、ほら…我慢するな」
「だめ、恥ずかし…い…です…」
「何を今更」
「だって…先日まで小さな子供だった方に…こんなこと…」
「私は見せて欲しい。ほら、仲達…我慢するな。私はお前を愛しているのだから」
「っふ…、ぁ…!」

私の言葉に仲達はとても幸せそうに笑う。
深く啣えて促すと漸く仲達は堪え切れずに果てた。
口だけに受け止め切れず、少し顔にかかってしまったがそれを気にせず拭う。
仲達は脱力して体を布団に沈めていた。

「…果てる時、仲達の体はどのようになる?」
「は…、い…?」
「知りたいのだ」
「…もう、困った生徒だこと。先生が落ち着くまでお待ちなさい…」
「好奇心旺盛だと言って欲しいものだな、先生」
「待ち、なさい…」
「ん…、ごめんな」

傍に横になると、仲達は私の頬を撫でた。
まだ余韻が残っているのか、頬に涙が伝っている。
余韻に浸ったまま仲達は私に話した。

「…下腹部に快楽が集まって…体に電撃が走ったように痺れて果てます…。
果てた後は暫く体を動かす事が出来ません…」
「疲れてしまうから、か」
「敏感になっているからです…。余り触らないで下さいませ…感じてしまいます。
果てる行為そのものは…、欲求を解放してあげる事…。
本来、情事とは子作りの為の行為です…同性同士では孕む危険はないでしょうけれど…」
「なれば、次は情事について詳しく教えて貰おうか」
「…調子に乗らないで下さい。私とて、怒る時は怒りますよ」
「…すまぬ。怒ったのか?」
「……。」

声色が本気だったので、少し動揺し仲達に謝罪した。
嫌われたくない。
顔を逸らした仲達に不安げに擦り寄ると、首を傾げつつも頭を撫でてくれた。

「怒らせてしまったのなら謝る。だから…嫌いに、ならないでくれ」
「?…こんなことで嫌いになりませんよ」
「…それならば、良かった。嫌われてしまったのかと思った」
「…ふ」
「何だ」
「可愛い人」

私の不安を察したのか、仲達は笑って私の頬を撫でた。
その手に甘えるように擦り寄ると、仲達が私を抱き締める。

「自惚れるようですが…私が好きで、仕方ないのでしょう?」
「ああ…大好きだ仲達」
「…っ、当たっています…子桓様」
「当てている」

仲達の太腿に擦りつけるように勃起した己のを当てていた。
別に我慢をしていた訳ではない。
仲達が艶やかな顔で果てる姿を見てしまうとどうにも堪え切れぬものがある。

「初めての夜を、覚えているか?」

仲達の手を取り、指に口付けた。

ただでさえ同性での性行為。
私はいつも仲達の体に負担をかけている。

本当は仲達が心配で堪らなかった。
授業だと称して私の我が儘だと言えば、私に甘い仲達なら教えてくれるだろうと思った。

まさか本当に講義になるとは思わなかったが。


「覚えていますよ…。あなたが公子になって、間もなくの頃でした…」
「…辛かったか?
次の日の仲達がとても見ていられるものではなかった…。忘れられるものではない」
「確か、私が昏倒しましたね…。私が初めてだったのですから…仕方ないでしょう」

私を引き寄せて首に腕を回し、仲達は耳元で我慢なさらないでと囁いた。


「覚悟は…とっくに、出来ていたのです…。初夜の日だって…」
「…力を抜け」
「っ、っ…ん…」
「どうして、このように熱い…?」
「…あなただから、です…」

仲達の中を解すように指を挿し入れると、そこは熱を持ったように熱かった。
初めて仲達の体に触れた夜は、此処から夥しい程に出血をしていた事を思い出す。

今では多少体も慣れていようが、初夜の血塗れのあの光景が忘れられない。
仲達は大丈夫だと言いながら、酷い出血と思いもよらぬ体の疲労に翌日昏倒した。
あれから、挿入前には必要以上に念入りに解すように努めている。

糸が引くほどに柔らかく解していくと、仲達が小さく胸の中で快楽に震えていた。
私好みに躾てしまった体だが、それでも仲達は何処かいつも初々しかった。
何度も体を重ねているというのに、未だに恥ずかしいと言う。
仲達の体はゆるゆると私の指を締め付ける。



仲達くらい美人なら或いは…と思わなくもなかったのだが、
初夜の秘部からの出血を見て何処か嬉しいと感じている自分が居たのも事実だった。
仲達が初めて体を赦したのが私だという事が何よりも嬉しかった。

「世の中には、二種の人間がいるな」
「…?」
「誰にでも股を開き体を抱き、快楽の為なら誰でも良いという者」
「男女ともにおりますね…」
「…ただひとりとして、愛した者だけに心を開く者。仲達は後者か?」
「はい…。私にはあなただけです。…子桓様は?」
「私がこのように触れて、抱くのは仲達だけだ」

大分解れて中から指を抜くと、仲達は小さく震えて目を閉じた。
その体は熱を放っているように熱く、うっとりとして漏れた吐息も熱かった。

半勃ちさせながら、股を濡らせて脚を閉じる仲達は色香があり妖しく誘う。
男だというのがたまに信じられなくなる。

いよいよもって挿入してやろうと脚を持ち上げたが、仲達は拒み脚を閉じて首を横に振った。

「…我慢するなと、お前が言ったではないか」
「…ふ、そんなに早くしたいのですか?」
「…仲達…早く…」
「いい子だから…お待ちなさい」

力無く仲達が起き上がり、私の膝の上に腰を下ろし額に口付ける。
小首を傾げつつも、下から仲達の首筋を甘噛みしながら腰を支えた。
仲達はまだ挿入を赦してくれない。

いつの間にか情事の主権を仲達に取られてしまった。

「…仲達…」
「何です?」
「焦らすな…お前の中で果てたい…」
「生徒ならば、先生の言う事をお聞きなさい」
「っ、今、それはもう」
「あなたが言い出した事でしょう?」

仲達が張りつめた私の根元を掴み、果てぬよう握った。
突然の事に仲達の肩に埋まり唇を噛む。

「っ、仲達、あまり苛めてくれるな…」
「別に苛めてません。でも…少し、癖になりそうです」
「お前、な」
「そのまま、じっとしていなさい」

私のを握り締めたまま、仲達は己に当てがう。
私に手出しをさせないつもりなのか、腰を支える手を握り締めて腰を落としていく。

「っ…あ、くっ…」
「仲達…っ」
「こんなに、張りつめて」
「く…、ぅ…!」
「子桓様…?」

仲達が奥まで腰を進め根元から手を離した瞬間、中の締め付けに堪えきれず果ててしまった。
ぞくぞくと背筋を震わせ目を瞑る仲達の細腰を抑え付けるように抱き締める。

堪えていた為、仲達の中は白濁に塗れてしまっただろう。
震える仲達の肩口に埋まっていると、髪を撫でられた。
濡れた瞳で仲達が私を見つめていた。

仲達も先程ので軽く果ててしまったらしい。
私の腹の辺りが仲達の白濁に塗れていた。

「…私が、動いて差し上げようと思ったの、です…」
「…!なら、このまま…」
「子桓様は…我慢が出来ない子、ですね?」

まだ余韻が残っていた為、仲達が少し腰を引くだけでも全身に快楽が駆け回った。
仲達が眉を寄せて笑み、私の頬を両手で包むようにして腰を揺らしながら口付けた。

奥に当たる度に仲達が小さく体をびくつかせている。
柔やわと与えられる快楽に、決定的なものが欲しくて腰を掴むとその掌を仲達に叩かれてしまった。


眉を寄せて仲達を見上げると、叩いた掌と頬を撫でられた。
腰を緩く動かす事は止めない。

快楽にとろけた瞳をしながらも、私には手を出させてくれなかった。

「だ、め」
「…?」
「がまん、なさい」
「っ…ぅ」
「ふ、可愛らしい…子猫みたいです…子桓様」
「もっと、突き上げたい…奥に」
「…駄目。直ぐに果ててしまった…お仕置きです…」
「っ、今宵の仲達は…意地が悪い」
「先生が良い、って…あなたが言ったの…でしょう?」

仲達が腰を揺らす度に既に中に出した私の白濁が溢れて、厭らしい音を響かせていた。

先程挿入して直ぐに果ててしまったのが気に入らぬらしい。
誰のせいだ、と言いたかったが講義を受けたいと言ったのは私だ。
どうやら先生の言う事を聞かねば仕置きされるらしい。


だがこのまま柔やわとした快楽を私は好まない。
このまま黙って言いなりになっているのは解せぬ。

確かに仲達は私の先生だが、それ以前に私は仲達の主で恋人だ。
仲達の腰を掴むとまたも掌を叩かれたが、力任せに寝台に押し倒し脚を開かせ奥まで一気に挿入した。
腕力では仲達は私に勝てない。

「っ…ぁあ…!」
「ふ…、良い顔だ…仲達はそうで在らねばな」
「言うことを、聞きな…さ…っ」
「嫌だ。確かに私達は生徒と先生であったが、私達はもう恋人であろう?
然らば、私の好きにさせてもらう」
「っ…今、そんな風に、されたら…っ」
「どうなる?」

今まで堪えていた分、寝台が軋む程に仲達を突き上げ続けた。
仲達はどうやらずっと堪えていたらしく、私が突き上げたら直ぐに果てた。
先程の仕返しとばかりに、仲達が果てようとも突き上げるのを止めない。
私が中に果てるまで突き上げ続けた。


体を激しく揺らされながらも、無意識なのか仲達は私の首に腕を回す。

「っ…ぁ、も…、子桓さ、…だ、め…です…」
「駄目と言いながら、この腕は何だ?」

仲達が快楽に酔い、ぽろぽろと涙を零していた。
一度中から引き抜くと仲達の股から太腿を伝うほど、私のが溢れていた。

「だって…、私は…あなたの、恋人ですもの…」
「…っ」

仲達は言葉を詰まらせながらもそう言った。
体を痙攣させ未だに余韻覚めやらぬ仲達を見て、己の欲を自覚する。
やはり未だ仲達を抱き足りない。

うつ伏せにして寝かせ、上半身だけ振り向かせた仲達に口付けた。
濡れた瞳で見つめる仲達が尚更に私を煽る。
仲達はそのつもりはないのだろうが、私は仲達の仕草ひとつひとつに煽られていた。

深く口付け舌を絡めながら、そのまま腰を引き寄せて片脚を上げて仲達の中に再び挿入した。
仲達が目を見開き眉を寄せたが、唇も腰も離さない。
舌を絡ませながら、そのまま腰を動かした。

中にある私のが厭らしい水音を響かせていたが、仲達の体の方が遥かに厭らしかった。
こんなに中に注ぎ、突き上げ続けているというのに仲達の体は私を求めて締め付けている。

体を私に任せ、辿々しいながらも口付けにも応えてくれている。
仲達なりに懸命に私に応えようとしてくれているのが解った。

仲達はもう先生でいる事を止めたらしく、私に甘えるように唇を甘く噛む。

愛しい。
愛しくならない訳がなかった。
どうしてこれを手離す事が出来よう。

「子桓、さ…」
「…っ、仲達の、中に…」
「ぁ…!」

仲達の頬に触れ、私も頬を寄せた。
再び中に果てると、仲達が体を震わせて目を瞑る。
後ろからの体位の方が深く突き上げる事が出来るらしく、仲達も幾度となく私より先に果てていた。






濡れた睫毛に唇を寄せる。息も絶え絶えの仲達が心配だった。
余り動かさないで、と先程仲達が言っていたのを思い出し動かすのは止めた。

「…せんせ?」
「っ…、ぅ、ん…せんせ…、は…もう、終わり…」
「解った。ごめんな…仲達…」
「…、満足、しましたか?」
「…無理を、させた…」
「…子桓様たら、こんなに、沢山…中に…」

中から漸く引き抜くと仲達の体は腰から寝台に沈み、その身を痙攣させていた。
仲達の股から脚に白濁が溢れて伝う。

明らかにやり過ぎた。

先程のように私を叱るのかと思ったら、仲達は私を引き寄せるだけだ。
未だ落ち着かぬ己を抑えるように自分の肩を抱き締め、深く息を吐く。

「大丈夫か、仲達…」
「私の…恋人なら…傍に居て、くれますか?」

余韻がまだ収まらないのか、仲達の手は震えていた。
その手を握り締め、仲達の隣に横になり抱き締めた。

当たり前ではないか。



「私は…仲達の為なら何でも出来る…」
「何でも、は駄目です…」
「何故?」
「私の為に、命を懸けてはいけません…」
「何故だ」
「何でも。先生の…、いいえ…、仲達の…言う事を聞いて下さい」
「嫌だ。お前は今、何でもは駄目だと言ったではないか」
「…私は、あなたを護りたい。…ですから、私が命を捨て…っん…」

仲達の言葉を私が最後まで言わせなかった。
唇を合わせて、仲達を強く抱き締める。

「嫌だ」
「…子桓様は、嫌がってばかり。もっと、御覚悟なさいまし…」
「お前を失う覚悟など、私は一生したくない」
「それは、私とて…」

もうこの話は終わりにしよう。
そう言って唇に指を当てると、仲達は頷いて私の腕に甘えるように擦り寄った。

こんな話をしたかったのではない。





「……仲達」
「はい…」
「子桓と、呼んで欲しい」
「子桓様…」
「様、は…、いらない…」

涙が伝う仲達の頬に擦り寄り、目を閉じた。

一度だけで良いから仲達に子桓と呼ばれてみたい。
子供扱いも、主従でもない呼び名で一度だけそう呼ばれてみたい。


暫くの沈黙の後、仲達がゆっくりと体を起こした。
やはり呼んでくれないのか。
自らが課した無理な願いに仲達を困らせてしまっているのだろう。

そんな事を考えていたら視界に黒髪が映る。
はだけた着物をたゆませて、仲達が私を押し倒していた。

「…仲達?」
「私の立場では、不敬に当たります故…」
「…そうか。すまなかった」
「…主従でなければ、よろしいか…と」
「…?」
「恋人として、なら…少しくらいは…許して差し上げます…。私はもう、あなたのものなのですから…」

肩を支え私を起き上がらせると、仲達は私の膝の上に腰を下ろした。
ふ、と緩やかに笑ったかと思うと仲達から私に口付けてくれた。







仲達が両手で包むように、私の頬に触れ額に口付ける。
情事の名残あってか、私を見つめる仲達の瞳には色香が残っていた。

「…子桓」
「!!」
「…愛しています」
「っ、私の方がお前を愛している」
「…もう。私をこんな風にして…今日はあんなにいい子だったのに」

突如呼び捨てで字を呼ばれ動揺し、一瞬惚ける。
仲達の笑みに我に帰り倒れそうな背中を支えた。

「子供扱いするな。それとこれとは話が」
「子桓」
「っ!」
「ふふ、嬉しそうですね子桓様」
「…何故そこで呼んでくれなんだ…」
「私をこんな風にした子桓様に罰を、と思いまして」
「意地が悪い…」
「子桓様を苛めるのも、少々楽しいですね」
「…やはり苛めていたのではないか」

でも何処か悪くないと思ってしまうのは、仲達が相手だからだろうか。
私の前で屈託無く笑う仲達を見ることが出来たのが嬉しかった。
だが正直、仲達には妙な楽しみを与えてしまったように思う。






口では余裕ぶっているが、仲達の体の負担は著しい。
腰どころか、腕も満足に上げられないようだ。私の腕に頭を凭れて動かない。
本当は後処理までしてやりたかったが、仲達の意識が持ちそうに無い。
意識を失った体にまで手を出したくなかった。

「子桓様…」
「何だ?もう仲達は休むと良い…」
「…子桓」
「…ふ、何だ?」
「先生でも、軍師でも構いません…。
私をずっと、あなただけの仲達で居させて下さいね…」
「無論…。約束する」
「ありがとう、ございます…」

もう、おやすみ。
そうに告げると、仲達は私の頬に口付けて目を閉じた。
静かな寝息が聞こえる。


今も昔も、私は仲達に心から惚れている事に間違いはない。
先生でも、軍師でもいい。
根底では恋人としてしか見ていない仲達を離さぬよう、抱き締めて私も眠りに付いた。


TOP