二人で寝台に座り、引き寄せる。
湯浴みをした体は温かかったが、整った顔立ちに涙のあと。
手のひらで頬をなぞり口付けすれば、切れ長の瞳が揺れる。
やはり泣いていたのか。
「何かあったのか」
「別に何も…」
「言え、仲達。私しかおらぬ」
雨の中。
宮殿の中庭で佇む仲達を見つけた。
怪訝な顔で何をしていると駆け寄れば、
顔を見せることもなく振り返りただ黙って胸におさまった。
このままでは風邪をひいてしまうと、一先ず私の部屋に連れていき湯浴みをさせ今に至る。
仲達は私のことはやたら世話を焼くくせに、自分のことはなかなか話さない。
「あんな雨の中、傘をささずに居たら体調を崩すであろう。お前は私を怒らせたいのか?」
「申し訳ありません…」
「…お前が大切なのだ。わかっているのだろう」
「はい…」
ぽろ、とまた涙が流れた。
このように泣く仲達は初めて見るので私もかなり動揺している。
「…話さなければわからぬではないか」
「無礼に当たりますゆえ」
「泣いているお前をどうしてほっておけよう」
「お話しても、笑いませぬか」
「聞いてやる」
涙を指でぬぐってやり、胸に埋める。
泣いている顔が見れない。仲達のことだから見られたくないのだろう。
「奥方に、言われました」
「甄が?」
「『あなたはどうしたって女にはなれない。子供も埋めない。
もし女にお生まれになったら私と争うのかしらね』と言われまして、
滅相もございませんとお話したのです。
確かに私は男です。女にはなれませぬ。
奥方様の地位を奪おうなども思いませんし女になろうとも思いません。
ただ、もし女に生まれていたのなら…とふと考えてしまいまして」
「ふむ…」
「もし女に生まれていたのなら、あなたの…いえ何でもありません」
仲達にしては可愛らしい悩みだ。
それにしても、そんなことで涙を流すほど悩むとは。
甄のことだ、おそらく深い意味もなくからかっているのだろうが仲達の受け止め方が重かったようだ。
「もし女に生まれていたら、何だというのだ」
「私の自惚れです…お気になさらず」
「そうだな、もしお前が女だったら見向きもせんな」
「……」
「行儀礼儀と口煩いし、自信家で矜持も高い。そんな仲達は男のままで良い」
「子桓様、それは褒めているのか貶しているのかわかりませぬ」
「お前が私の元に教育係として迎え入れられなければ、私はお前と出逢えなかった。
戦場に女は連れて行けぬ。私には、いつも傍に居てくれるお前でなければな。仲達」
「恐れ多いお言葉…」
「それに、女であるかどうかなど私には問題ではない」
「…っ、あ、あの…?」
そのままゆっくりと押し倒し、口づける。
舌を絡めて、歯列をなぞり指を絡めて抱きしめる。
「拒むなよ」
「い、言わないでください…」
「啼かせてやる」
「っあ…」
着ているものを肌蹴させ、肩に口付ける。
そのまま瞼に、額に、頬に、手のひらに。
「…お優しいのですね」
「お前の泣き顔にそそられて、な」
「ば、馬鹿めがっ」
「ふ…やはりいつもの仲達が良いな」
下穿きを脱がせ、やわやわと触れば少し濡れていて。
「期待していたのか?」
「ああ、もう言わないでください…恥ずかしい」
「何を今更。初めてではあるまい」
「も、本当に…」
私の言葉に反応してか否か、仲達の体が熱を持つ。
吐息を吐けば、それも熱く。
しっとりと睫毛が濡れて、更に情欲がそそられる。
「私の言葉が欲しいのか、仲達」
「ぁ…」
「濡れているな」
「子桓様の、」
「私の?」
「子桓様のお声が、子桓様が、たまらなく…好きなのです。
貴方は私の…生涯をかけてお慕いする君主です…」
私の手を取り、口づけた。
頬に自ら擦り寄せ仲達が口づける。
ゆるゆると仲達の体を解していきながら自分の中でも熱が高まるのがわかる。
「愛しくて…堪らないのです…子桓様…」
「もう寄せ仲達、抑えられなくなる。
普段そのような事を言わぬ癖に…」
「今は、子桓様しかおりませぬ」
掻き抱きたい欲求を何とか堪えて、中に指を入れる。
まだ少しきつく締め付ける。
「…愛しくてたまらぬ、仲達」
指を増やして抜き差しを繰り返せば、小さく声が上がる。
ぎゅう、と私の胸におさまり衣を握りしめて声を堪えている様が何とも艶やかで私を煽る。
解し火照った体から指を抜いて、口づけ仲達と繋がる。
「あ、し…、かん、さま」
「少しきついか。
すまぬな。あのような事を言われては私も止められぬ」
「っあ、はっ…」
「覚悟せよ」
仲達のを扱きながら、突き上げる。
声を抑えようと、堪えている仲達に荒々しく口付けて抱き締める。
仲達の何もかも愛しい。
「愛している」
「っぁ、ほ、本当に…」
「嘘は言わぬ。愛している。何度でも言うぞ」
「あ、ぁ果て、てしまい…ま…」
「果てよ。」
「し、子桓様の、で」
「全く、我が軍師は妖艶だな」
口付けを何回も繰り返しながら、腰を抑え強く打ち付ける。
水音と肌のぶつかる音が響き、その中で仲達と二人で果てた。
くたりと疲労した体はまだ熱く、頬には涙が流れていた。
「子桓、さま」
「何だ」
「…愛しています」
「わかっている…仲達、私もだ」
愛しくてたまらない我が軍師を胸に抱いて、また口付けた。