静音だから大丈夫だとか何とか言っていたのを思い出した。
一体何が大丈夫だと言うのか。
椅子に座り職員会議を続けていたが、中の振動に腰が抜けそうになる。
椅子に座っているからこそ、奥で振動を感じてしまう。
カチ、と音がして中の振動が強くなり唇を噛む。
私の中にこれを入れた恨めしいその御方は今はここにはいない。遠隔操作をされている。
「どうされました、学長」
「なん、でもない…」
私の不調を察して声を掛けられたが、絶対にバレる訳にはいかない。
子桓様にローターを入れられたままなど、バレたら私が社会的に死ぬ。
声を堪えつつ、何とか本日の勤務を終えた。
早く出して欲しいし、何より果てさせて欲しい。
ローターは焦らすばかりで果てるような強さではない。
何より子桓様のものと比べたら物足らない。
一先ず別室に退散し、溜息を吐く。
ローターの振動の強弱が少し弱くなった。
自分で取ればいいと思ったのだが、人の手を借りないと取れない奥にまで入っている。
立っていられず、下腹を抑えてその場に座り込んだ。
「居るか、仲た…」
「ぁ…」
「っ、やり過ぎたか」
「…子桓様」
子桓様が部屋を訪れた。
私の様子を見るなりローターの電源を切り、駆け寄ってくれた。
子桓様は、幼き頃からの家同士の付き合いで、教育係を務めたことがある。
今も私の生徒だが、秘中であれど恋仲に値する関係である。
胸に埋まり、浅く息を吐いた。もうつらい。
閨でのような姿を見せている事は解っている。
そのような姿の私を誰にも見せたくないという事も解っている。
「…もう、無理です…」
「解った。私の部屋に」
「はい…」
子桓様の前であれば、役職は関係ない。
体の限界を伝えると、横に抱き上げ裏口から子桓様御自ら車を回してくれた。
助手席ではなく、後部座席に寝かせられ目を閉じる。
車内は、子桓様の香りがする。
それだけで少し落ち着いた。
マンションに着き、横抱きにされて裏口から運ばれる。
エレベーターの中で子桓様の胸元に縋った。
酷い仕打ちを受けたと思う。
戯れだとは思ったが、焦らしに焦らされ過ぎて酷い。
子桓様は戯れかもしれぬが、私は少し傷付きもした。
「…子桓様…」
「っ、やり過ぎたと思っている」
「私はあなたの、玩具ですか…?」
「断じて違う。私が何もかも悪かった」
「なら、きちんと…謝罪して下さい」
「…ああ…」
「ん、っ…ん…」
先程まで酷い仕打ちをされていたのに、唐突な甘く優しい口付けに吐息が漏れる。
私は悲しみ、怒ってもいたのだが口付けくらいで許すつもりはない。
だが、口付けが優しすぎて絆されてしまう。
脚を下ろすよう促すと、手摺に凭れるように背を預けて再び口付けを強請った。
焦らされ過ぎて、どうにかして欲しい。
子桓様が欲しくて切なくて、首に腕を回して口付けを続けた。
「っ、待っ…、…否」
「…?」
「私が悪い」
エレベーターが止まった。
口付けだけで腰が抜けそうになっている私を見て、手首を掴まれ腰を引き寄せられて早急に子桓様の部屋に入った。
子桓様が後ろ手に鍵を掛けるのを見て、胸に凭れる。
もう、立っていられない。
「…子桓様…」
「ん」
「…取って、下さ…」
「ああ」
子桓様も私も、互いを見つめた瞳が蕩けている。
互いに欲情していて、その欲情を抑えられない。そうなのだと通じた。
私から上着を肌蹴ると、子桓様が私の下穿きを引っ張る。
片脚だけ剥かれ、膝立ちで壁に手をつく。
「力を抜けるか?」
「もう…」
「…充分過ぎるほど蕩けているな…」
「っ…、ぅ」
「たまには趣向を変えようと思ったが、やり過ぎた。すまなかった…」
「…もっと、きちんと…」
「…ごめんなさい」
「よろしいです…」
「…仲達、私を嫌いになったか?」
「なりませぬよ…」
壁に手を付けられて、子桓様に擦り寄られる。
子桓様は私に嫌われる事を極端に恐れていらっしゃる。
私が傷付いたのに私より傷付けられた瞳を向けられては、これ以上怒る気にもなれない。
そんな事で嫌いになったり、別れ話をするほど私は小さくない。
子桓様の額に口付けて、もう許して差し上げた。
額から唇を落として、唇を合わせた。
私から口付ける事は少ない。
私のあからさまな異変を感じたのか、子桓様は眉を寄せて私を見つめた。
「仲達」
「…子桓様」
「此処でいいのか」
「ベッドまで、待てません…」
「私も待てない」
壁に肩を預けて座る。
片脚を上げさせられて中に指を入れられ、漏れそうな声を押し殺す。
「っふ、ん…」
「此処は私の部屋だ。私しか居ない」
「ですが…」
「もう少し、力を抜け」
「…、ずっと…、我慢していたのですよ…」
「それは…」
「あなたが、欲しくて」
「っ」
無意識に中の指を締め付けてしまう為、なかなかローターに指が届かないらしい。
私の方は焦らしに焦らされ、口付けや指だけでももう限界に近い。
「一度、楽にしてやろう」
「ん…、っふ、ぅ…」
「このようにして…」
「ぁ…、ゃっ…ぁっ」
私のに触れて擦り上げられる。
深く口付けられて、気持ちいい。
未だ中にあるのだろう。異物感は消えてない。
私を果てさせようとして下さっているのなら、それも使えばいい。
「…子桓様、使っていいです…」
「しかし、それは…」
「…あなたまで我慢させたくありません」
「…取ったら、覚悟しろよ仲達」
「?」
「お前、今…どんな顔をして私を見ているのか、自覚がないな」
「…?」
「全く…」
「ひ、ぅっ…!」
カチリと音がして、中に振動を感じる。
だいぶ振動が深くて、脚を閉じて背を壁に凭れる。
動作は同じなのに先程とは違うのは、子桓様が私に触れていらっしゃる事だ。
このままでは玄関を汚してしまう。
「…ぁ、っぁ、んっ、ぅ…!」
「そのまま、果てよ」
「ぁ、あ、ゃ、ぁあっ…!」
促されるように扱かれ、中に指を入れられてどうしようもなく果てた。
果てた後でもローターが止まらなかった為に、びくびくと体が痙攣して惚ける。
下腹部が熱くて、結局床を汚してしまった。
「…子桓様…」
「もう、止めた…」
子桓様に口付けられながら、下腹を強く押される。
反射的に力を込めると中からローターが出てきたのか、子桓様が指で引っ掛けて出してくれた。
ローターも子桓様の御手も、私の粘液やら精液やらで汚れている。
「っは…、ぁ…」
「…仲達」
座ってもいられぬ疲労感に体を倒そうとしたところ、そっと体を支えられた。
ふわりと体が浮いて、ベッドに寝かせられる。
直ぐに私の上に子桓様が伸し掛り、頬や髪を撫でた。
ああ、今すぐ繋がりたくてたまらないのだろう。
私も繋がりたくてたまらない。
「…子桓様…、ぁっ、ゃ、ん…!」
「はぁ…、仲達…」
「…もう、えっち…ですね」
「えっちなのは仲達だろう?」
子桓様を受け入れて首に腕を回すと、すかさず深く甘く口付けられる。
私がきゅうきゅうに締め付けてしまう為に、子桓様は少々眉を顰めていた。
直ぐには動かれず、体を繋げた事に幸せを感じて背中に腕を回した。
腹深くに子桓様を感じる。
「許可した私が今更何を言っても戯言でしょうが…、戯れとは解っておりましたが、どうしてあのような…」
「趣向を変えたくてな…」
「私に、飽きてしまいましたか?」
「まさか。いつもと違う仲達の表情が見たかった」
「見れましたか?」
「見れたが…、うむ…、傷付けてしまったな」
「はい…。酷いです…」
「もうしない…」
「…たまにだったら、良いです…」
「…今、何と」
「二度は言いませぬ」
いつもと違う私が見たいと言うが、私は私で捨てられて傷付いた子犬みたいな子桓様の表情を見ることが出来た。
そのお顔こそ、誰が見ることが出来よう。
甘く口付けられながら腰を掴まれる。
相変わらず細いと呟きながら、私の奥深くに突き上げられる。
ローターはずっと振動していたが、決定的な快楽は与えられず焦らされるばかりだ。
子桓様が一突きしただけで思わず腰が逃げるほどの快楽を感じて首にしがみつく。
そのまま突き上げられ続けて声が堪えられない。
「ゃ、ぁ…すご、ぃ…」
「おい、煽るな…」
「いつも…、より、大き…い…ような…?」
「気の所為だ」
「ひっ、ぁう…!」
「腰が逃げているぞ」
中はもはやとろとろに蕩けていて、子桓様をきゅうきゅうに締め付け、吐き出さずに果てた。
視界が真っ白になるも、再び突き上げられ続ける心地に子桓様に身を任せる。
果て続けておかしくなりそうだ。
水音が響き、ぐちゅぐちゅとした音が耳に残る。
加えて私を呼ぶ子桓様の声が艶々でいてお優しくて、愛おしさに口付けを求めた。
あなたなら、私に何をしてもいい。
ちゅ、ちゅっと音がするほど口付けて子桓様を抱き締めた。
私は、この人の事が大好きだ。
中にどくどくとした粘液を感じて、中に果ててくれたのだと目を細める。
今日の私はどうにも切なくて、物足らない。
いつもならこれで離れてしまうだろうという時であるが、子桓様と繋がったまま体を起こして貰い膝に座った。
体位が変わり、股や脚に子桓様の精液が溢れ出る。
「…えっち」
「それは仲達だろう…。足らぬか」
「はい…。もっと、子桓様…」
「…帰さぬぞ」
「最初からそのつもりでしょうに…」
「そうだな…」
子桓様に口付けられながら、腰を押さえ付けられ下から突き上げられる。
私も深く抉られるような快楽を求めて腰を振った。
昨今は子桓様が大人びて、日頃情事を控えていたが故に、互いに欲情が溜まりに溜まって破裂したように思う。
対面座位でも、騎乗位でも子桓様を受け入れた。
後背位は私が嫌だと子桓様が知っている為に、それは為されなかった。
途中から数えるのを止め、子桓様を受け入れたまま腕の中で気を飛ばしてしまった。
子桓様の胸の上で目を覚まして、甘く深く口付けられた後、下腹に圧迫感を感じて子桓様を見上げる。
また勃起なされて、中が苦しい。
「…子桓様…」
「寝かせぬぞ」
「えっ…、も、もうご勘弁下され」
「もう少し付き合ってくれ」
「…ぅ…」
私も何度果てたのか解らないほどくたくたに疲れて、もう腰が上がらない。
せめて対面座位や騎乗位は無理だと伝えると、横に寝かせられて再び奥に子桓様を受け入れる。
子桓様を受け入れすぎて、私の体は余りにもすんなりと嵌り恥ずかしくなった。
愛しているのだから仕方ないだろう。
腕に頬を寄せて肩で息を吐きながら、下腹を撫でた。
子桓様がこんな奥の、中に居る。
「もう…、えっちです…」
「仲達がな…」
腹を撫でながら子桓様を見上げると、子桓様がとろんとした瞳で私を見つめていた。
ああ、愛して下さっている。
私の事を愛して下さっている。
そう思えてならない優しい眼差しであった。
「好き…」
「ん?」
「…好きです、子桓様…」
「私の方が好きだ」
「私の方が好きです」
「ふ…」
「ふふ」
事後に笑いあって、子桓様の腕の中に甘えた。
子桓様も私に甘えるようにして頬や首に擦り寄られた。
麗しい貴公子のような見目で在られるのに、私の前では子供のように甘えられる。
玩具はたまにだったら良いです、外は駄目ですと、小さな声で呟くとあざとく聞いておられて耳を甘く噛まれた。
「たまになら良いんだな?」
「…されど」
「?」
「子桓様の、が良いです…」
「お前は…、全く…」
ぎゅうと強く抱き寄せられて微笑む。
機械などに、子桓様が敵う筈もない。
後で風呂に入ろうと、それまではこうしていようと、二人でベッドで互いを甘やかしていた。
そして互いをとても愛していた。