「お前はいつも、書の虫だな」
「先人たちの言葉にはいつも関心させられますので」
「孫子や論語など、お前ならば片手間であろうに」
「覚えたことを忘れないこと、それが勉学ですよ子桓様」
教育係の時のように、相変わらずの口調で仲達は話す。
宮中の書庫、必要な書簡を探して仲達を連れ出した。
「ところで急に何なのです、花について調べられるとは」
「よい詩の材料になるのでな」
「風雅を解せぬ私にはわかりかねますが…お手伝い致しますよ」
「すまんな」
甄や張コウに聞けば、やすやすと答えが聞けようが。
自分でどういうものなのか調べてみたかった。
ただ、仲達までついてくるのは想定外だったが。
私が探している横で、適当な兵法書を見つけては小脇に抱えている。
その顔は心なしか嬉しそうで。相変わらずだな、と思う。
「どなたかに花を贈られるのですか?」
「お前に、だ」
「え?」
「故に、お前に手伝ってもらっては都合が悪いのだがな」
「え、あ、あの…では私はこれで」
「まぁ、待て。逃げるな。寒いのだ。ちょっと傍に来い」
「ちょっ、子桓様」
逃げる仲達の腕を掴み、強制的に胸の中に埋める。
少し体は冷えていたが、仲達の鼓動が伝わった。
「これでは手伝えませぬ」
「構わぬ。ちょうど見つけた」
「…南天?」
「中庭で見つけてな、胸元にある」
仲達に胸元を探させ、南天の実を手に持った。
南天の実を仲達に持たせ、見つけた書簡を読む。
「ふむ、なるほど。やはり合っていたようだ。」
「何がです」
「南天にも、言葉が籠められている」
「それは何と?」
「この南天をお前にやろう。そして意味を読むがいい」
南天と書簡を渡して、窓際に座った。
仲達は困惑したように南天を持ちながら、書簡を読んだ。
私の想いを知るがいい。
ほら、顔が赤くなった。
「わかったか?」
「く、口でおっしゃればよろしいのでは?」
「それではつまらないではないか」
「わ、私も…」
「ん?」
「…私も、あなたと同じ気持ちです」
「ふ、そうか。それはよかった」
南天。
『私の愛は増すばかり』