もっと

今。
私は、仲達の部屋の寝台にいる。
というか仲達に押し倒されている。


「もっと、私を、求めてくだされ」


待て待て。
とても嬉しいがこれは一体どういうことだ。
























時は数刻前。
父が主催する無礼講の酒宴があった。

はじめは仲達が横に居たのだが、私が父に呼ばれた為その場を離れた。
しばらく父とたわいもない話をしながら酒を飲み交わし、父の隣で他の者の挨拶に応えていたところだ。

張コウが席にやってきた。

「曹丕殿、曹丕殿」
「何だ」
「司馬懿殿が大変可愛らしいのですけれど」
「…何事だ?」
「どうやら泥酔してしまわれたようで」

仲達は確か下戸だったはずだ。
そもそも酒も騒がしいことも好まぬのに泥酔とは何だ。

「仲達は何処だ」
「夏侯淵殿にだいぶ飲まされているようで」

何をしているのだ叔父たちは。ちらりと視線を送る。
成る程、夏侯淵が酔っている。隣で夏侯惇がつぶれている。
大方絡み酒の叔父たちに絡まれたのだろう。

だが仲達の姿が見えない。

「可愛いとは何だ」
「司馬懿殿が曹丕殿の事について話してましたよ」
「何?」
「と言いますか。あれは惚気ですね」

泥酔した仲達など見たことがないので、想像がつかない。
それより何より一体何を話している?

「それがとても可愛らしくて。
 このままだと私が司馬懿殿を持って帰ってしまいそうですから、お呼びに参りました」
「その仲達が見当たらないが」
「徐晃殿が今、傍に」
「ちっ、わかった。直ぐに行く」




席を離れ、仲達を探す。
見ると廊下を出た中庭に徐晃といるようだ。
後ろ姿しか見えないが、どうやら徐晃の肩に頭をもたれかけている。

その光景に腹を立てつつ、中庭に向かうと話し声が聞こえた。

「子桓様は、本当に私にだけ優しいのだろうか」
「はぁ、某にはわかりませぬが端から見ても、司馬懿殿は曹丕殿に大切にされているでござる」
「それがいかんのだ!」
「な、何でござるか」
「…優し過ぎるのだ。子桓様は私に優しすぎる」
「はぁ」
「もっと私を求めてほしい」
「そ、それは直接本人に言ってくだされ」

日頃の鬱憤なのか何なのか。
どうやら徐晃に愚痴をこぼしているみたいだが、絡まれている徐晃は困っている。

「徐晃」
「!、曹丕殿」

一瞬、徐晃の顔が青ざめたのは気のせいか。

「仲達が世話になった、戻るがいい」
「しからば、御免」

逃げるように徐晃が去っていった。
どうやらだいぶ感情が私の顔に出ていたらしい。

半分眠りに落ちそうな仲達の隣に座る。

「子桓様、怖い顔」
「誰のせいだ、誰の」

私が座ると肩に擦り寄ってくる。
体温が高く、顔が熱い。相当酔っているようだ。

いつもはきちんとした見なりなのだが、酔って熱いのかかなり服装が乱れている。

「帰るぞ」
「ん、歩けませぬ」
「全く、この酔っ払いめ」

立ち上がり手を差し延べたが、手だけ握り地面に尻をついてしまった。

「仕方ない奴だ」

仲達を横抱きにして担ぎ、回廊を歩く。
いつの間にか裸足だ。靴は会場に置きっぱなしらしい。
仲達は目をつむって私に体を預けている。

「お前が泥酔するなど初めて見たぞ」
「私、酔ってませんよ」
「酔っ払いは皆そう言う」
「酔ってませんもの」
「わかったわかった」

どうやら拗ねてしまったようだ。
頬を膨らませている。

酔った仲達は素直だ。
感情に素直で普段すました表情がころころ変わる。
そしてよく喋り、よく触る。

張コウ曰く、確かにこれは可愛らしい。

仲達の部屋に着いた。
寝台まで歩き、仲達を下ろし…















たところで、気付けば押し倒されて今に至る。



「仲達?」
「子桓様、もっと」
「もっと?」
「私を求めてくださいませ」

仲達の手が服の上から私のものに触れている。

「酔いすぎだ仲達」
「子桓様は」

指で顔をなぞられる。
仲達が私の体の上に四つん這いになっている。

「いつも私に優しくて」

着物が脱がされる。

「でも、優しいだけでは足りませぬ。もっと子桓様が欲しい」

仲達がするすると下の方に下がっていく。
これから何をするのか察し、顎を掴んだ。

「お前にそれはさせたくないと前に」
「嫌です。子桓様は私にする癖に」

私のを掴み、触っている。
仲達にあてられてか、無意識に半勃ちしていた。

「子桓様、の」

口に含まれる。
仲達の口の中はとても熱く、慣れていないたどたどしい舌が尚更に私を煽る。

「…こんなに、固くさせて」

唇で啄まれ、口づけられる。

仲達に今まであえてやらせなかった奉仕行為。
『恋人』として扱いたい私としては、
服従とか屈服させる行為のような気がしてやらせなかった。
私が仲達にすることはあったが、それを仲達自らが行うとは。

酒は恐ろしいものだ。
たどたどしいながらも、奉仕を続ける仲達を見ながら、体を起き上げて頭を撫でた。

「もう、離せ」
「果ててくだされ」
「っ…」

仲達を離そうとしたが、離れないので口の中に果てた。
白濁の液体が仲達の唇に光る。初めて口にしたのか、仲達は口を抑えて目をつむった。

「無理するな、吐き出せ」
「…飲んでしまいました」

唇を拭い、私の膝に頭を載せた。



「…さて、どうしてくれようか仲達?」

散々挑発され、理性を保つ方が難しい。
顎を掴み上を向かせれば、穏やかな瞳で笑った。
普段このように笑わないので、動揺を堪えるのに必死だ。

「…今夜言ったことは全て許してやる。故、お前の本当の気持ちを聞かせよ」
「本当の気持ち?」
「私はお前に優しすぎるとか」

仲達の髪を撫でてやると、気持ちよさそうに目をつむる。
何だか猫のようだ。

「子桓様は私にだけ優しいのでしょう?」
「そのつもりだが」
「でも優しいだけでは、足りませぬ」
「ほぅ」
「もっと、私を引っ張り、私を求めて下さい」

仲達からの話しを大筋でまとめるとつまり。


「主君たる決断力に欠けるか」

つまりはこのヘタレが!と言われているようだ。
確かに私は仲達に対し、大切にしすぎて慎重になっている節は否めない。
だがこれは相手が仲達に対してのみだ。
好きな者ほど大切で、好きな者にほど弱い。

「子桓様は元々よく出来た方。私がお育てしたのですから」
「また随分と懐かしい話だな」

仲達を私の膝の上に座らせ、後ろから抱きしめた。
まだ体が熱い。

服を開けさせ、仲達のに触れる。

「…感じたのか」
「子桓様に、あてられて…っぁ」
「ここも、濡れているな」

後ろに触れば直ぐに指が入った。
酒と先程の行為のせいか、仲達の体はとても妖艶だ。

「明日」
「っふ、ぁ…?」
「腰が立たぬものと覚悟せよ」

指を奥まで入れて中をほぐしていく。
それから抜き差しをして、仲達の反応を見た。

「だ、駄目です…そんな風にした、ら」
「どうなる?」

仲達の体を知っているのは私だけだ。
何処に触れれば啼くかなど熟知している。
仲達の擦り上げつつ、指の抜き差しを繰り返せばどうなるかなどよくわかっている。

「ぁ…果て、てしま、っ…」
「まだイかせぬ」
「っ、ぁあっ」

仲達の根元を握り、果てさせぬようにする。
体がびくびくと快楽に奮え、生理的な涙が流れている。
私の理性などとっくに欲望に負けた。

「子桓、様っ…あぁぁっ」

座らせたまま、後ろから挿入した。
中は熱く締め付けて私を離さない。
仲達の根元は抑えたまま、体を押し倒し後ろから腰を突き上げていく。

「ひっ…ぁっ、ぁ…!」

いつもは我慢している声だが、今宵はよく啼く。
厭らしい水音と肌のぶつかる音が響いている。

「も、もぅ…お許しくださ…、ぁっ、ぁ、壊れ……っ」
「辛いか?」

わざと果てる寸前で無理矢理止めて、腰を揺すっているのだ。
仲達の体は快楽に支配されている。

敷布を握りしめ、体を後ろから犯されて、
声をあげる姿は非常に妖艶で、仲達を何もかも支配したい気持ちが沸き上がる。

「し、子桓さ、っ」
「許す。果てるがいい」

仲達を抑えていた、手を離して尚も腰を打ち付けた。
がくがくと体が震えて、仲達は果てた。
同時に中が締め付ける。

「っは…、はぁ…」
「まだだ」

果てたばかりで動けない体を後ろから引き寄せ座る。
ずずっと奥に入っていく。

「っあ…!」
「まだ私が果てていないのでな。もうしばらく付き合え」
「い、今動かしたら、直ぐ、にっ…!」
「何度でも果てるがいい」

仲達の腰を持ち、抜き差しを繰り返して行く。
後ろから仲達の耳を甘く噛み囁いた。

「…私を挑発したお前が悪い」
「ぁっ、っふぁ…子桓、様…っ」
「何だ?」
「…字を、っ」
「ああ、呼ばれたいのだな。仲達」

耳元で字を囁けばぞくぞくと仲達の体が震え、
喘ぎに似た声で字を呼ばれれば私も欲情する。

お互いにお互いの字を呼びながら、二人で果てた。
仲達は脱力して、私の胸に背中を預けて目をつむり肩で息をしている。






「………子桓様…?」
「ん?」
「…これは一体どういう…な、何故繋がって」
「ああ、酒が抜けたか?」

激しく抱き合ったせいか仲達の酔いが醒めたようだ。
状況を見て、更に顔を赤らめる。

「覚えているか?今までのこと」
「お…覚えて…います」
「そうか」
「か、数々の御無礼をお許し下さいっ」
「許してやる。私も随分と楽しんだのでな」

ゆっくりと仲達から引き抜く。
ぞくっと体が震えて、私の手を握った。




「先程、何故あんな意地悪を」
「泥酔したお前は性が悪くてな。妬かない方が無理と言うものだ」
「う…」
「私以外に誰彼構わず触れるな」
「あの、もしかして」
「何だ」
「子桓様も酔ってませんか…?」
「さて、な」

頬に口づけ、仲達を押し倒す。

「子桓様?」
「もう一回」
「なっ、先程」
「あれはあれだ。足りぬ」
「し、子桓様…っ」

仲達に口づけてまた行為に及んだ。













それから朝が明けた。仲達は私の腕の中だ。

頭が痛い。
どうやら私も酔っていたらしい。半分記憶が飛んでいる。
あれから仲達を一度抱き、仲達が意識を飛ばしてしまったのは覚えている。

「…子桓様」
「すまん」
「はい?」
「やり過ぎた」
「ええ、本当に。私が壊れたら子桓様のせいですからね」
「う…、すまん」
「…まだ日が明けるのに時間があります」
「そうだな」
「…腰が立ちませぬ。湯浴みに連れて行って下され」
「ああ、連れて行ってやる」
「お互いに」
「ん?」
「お酒は」
「ああ、酒は…そうだな。私の前なら許す」
「全くもう」
「酔ったお前は危険だからな」

仲達を横抱きにして、湯浴みに向かった。


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