依存いぞん

貴方様を想わない日はなかった。


ふと発せられた仲達の言葉が胸をついて、自分の顔が紅潮したのが解った。
決して悟られぬように口元を掌で隠し顔を逸らすが、結局仲達に頬に両手で触れられ、顔を向けさせられる。

したり顔で笑う仲達に、眉を寄せて睨むと小さく笑った。

「何だ」
「ふ、普段は冷徹で在られる貴方様が…一介の軍師の言葉にこうも揺れる様を見れるのが愉快です」
「一介の軍師?真にそう思っているのか、仲達」
「いいえ」
「お前は私のものであろう」
「心得ております」

甘い言葉を紡ぎ合い、互いに頬に触れる。
私の膝の上にいる仲達に、下から唇を合わせ深いものにした。











其れというのも。
半年になるだろうか、恐らくは其れ程しか時は経っていないのだろうが。
仲達と離れていた距離は余りにも遠く、時は長く感じた。

暫く、私は許昌、仲達は戦場に身を置いた。
軍師として、仲達は対蜀の援軍の前線に送られ、私は許昌にて帰還を待った。

私の部下です、と言う主張は父の前では無意味。
ましてや、私の恋人です、とでも言えば今度は仲達が怒るだろう。

若輩者のくせに、と怪訝に陰口を叩かれていた仲達の評判は結果を出す事で周囲を黙らせた。
父にも一目を置かれ、昇進したと聞く。

だが、私のものという位置付けを変える気はなかった。








そもそも、前線になど出したくはないのだが。



「如何にお前が昇進したとて」
「?」
「私を追い抜かす事はあるまいな、仲達」
「有り得ませんな」

回廊を歩く仲達を捕まえ、部屋に連れ込んだ。
その体を寝台に押し倒し下穿きを脱がせたが、仲達は抵抗することをしなかった。
むしろ、擦り寄るように自分から、腕を回して。

「…子桓様」

一度だけ呼ばれた。

そのまま愛撫を続け、抱き寄せて体を繋いだ。
快楽に脱力した体を引き寄せ、膝に抱き今に至る。

「お前が私を殺す、ならば有り得る話だ」
「あなたは私を殺せるのですか?」
「さて、な」
「私が一度でも、貴方様を裏切った事がありましたか?」
「今までは、な」
「疑っておられるのか」
「否、手放したくないと言っている」

怪訝に顔をしかめた仲達に、頬を寄せ唇を重ねた。
直ぐに口付けは甘く溶けて、仲達の頬を染めた。
その唇を指でなぞり、見上げた。

視界には、仲達しかいない。
私には、仲達しかいない。



「お前のいない、世界など」
「其処まで、考えずとも」
「…ふ、お前は私が居なくとも生きていけようが」
「…本当にそう思っていらっしゃるのか」

眉を寄せ、背中に腕を回され肩に顔を埋める。
表情は見えない。





















「この半年、貴方様を想わない日はなかった」

正直、不意打ちだった。
肩に頭を乗せ、此方を向いた仲達は怪訝に眉を寄せた。

「…貴方様にしか、字は呼ばれたくないのです」
「誰ぞ、呼ばれたか」

仲達が時折見せる心理に、愛しいと心から想う。
肩に擦り寄る仲達に頬を寄せ、下腹部に触れるとぴくっと眉を寄せた。


依存


「…先程」
「先程は性急であった。もう一度、触れさせよ」
「…仕方のない方」

頬を染め、眉を寄せて笑う仲達の唇を指でなぞった。
口では不服と言いながらも、甘く擦り寄る。
向き合い座る仲達の秘部にゆっくり指を入れた。
先程、体を繋いだ痕が其処には未だ残り、白濁としたものが股を伝った。

「っ、子桓、さ…」
「もう、良かろう?」
「ふ…、っあ」
「…っ、心地好い」

先程注ぎ込んだ白濁が滑り、仲達の中に再び己を挿入していく。
中は少々きつく、熱い。

胸に縋る仲達の手が見えて、その手を取り甲に口付ける。
小さく嬌声を漏らすその唇を指でなぞり、腰を進めていく。

「仲達…私はな…」
「…っ?」
「時間が、惜しい」

腰を引き寄せ奥深くに打ち込むと、仲達は背を反らして目を瞑り、がくがくと震えた。
接合部から、収まりきらない白濁が溢れている。

卑猥な水音が響き、仲達は頬を染めて顔を逸らす。
顔がもっと見たい、と顎を掴み此方に向けさせると漸く其の鳶色の瞳を見つめる事が出来た。

「こう、し」
「子桓と」
「しか、ん…さ…ま」
「其れで良い。仲達」

動くぞ、と一言耳元で囁き、細腰を掴み抱き寄せた。
深く突き上げ、仲達の体が跳ねる度に溢れた白濁が脚を伝っていく。

揺さぶられながら、恍惚な表情で声を堪える姿は妖艶で…何よりも愛しい。

幾度抱いたところで足りない。
仲達に溺れる。

恋という病を患っている。





















「…離れたくない」
「?、…っえ…?」
「離れたくない、な」
「…此処に」

情交を終え、細身の体を一頻り抱き寄せた。
未だに体を繋いだまま、仲達を膝に乗せたまま。
重症だ、と自嘲し、このままでは辛かろうとゆっくり仲達から引き抜く。
溢れた白濁が仲達の股を伝った。

「仲達」
「…此処に。任務は完遂…ゆえ、仲達はまた貴方様のもので御座います」
「…ふ、そうだな」
「唯今…戻りまして御座います」
「嗚呼…お帰り」

髪を撫でてやり、胸に埋めてやると口付けを強請られ、そのまま唇を合わせた。
仲達が小さく、離れとうない…と呟いたのが聞こえた。


TOP